これから中国の経済はどうなるのか。投資家のジム・ロジャーズ氏は「中国企業は保護されすぎている。いずれ中国には倒産、破産する企業や都市、地方が出てくるだろう。中国政府は救済をしないことを明言しているが、経済成長を続けるにはそれを貫く必要がある」と予測する――。

※本稿は、ジム・ロジャーズ著、大野和基訳『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

中国を襲う「出生率の低さ」という危機

中国の弱みは何かと言えば、それはまず出生率の低さにある。

1979年から実施された「一人っ子政策」の影響で、ここ20年来、出生率が人口置換水準(人口が増加も減少もしない状態の出生率)をずっと下回っている(図1参照)。中国の出生率は1960年代から下がり続けていたが、「一人っ子政策」を導入したせいで、ついにこの水準まで落ちてしまったのだ。

図表1:出生率は人口置換水準を下回り続けている(画像=『お金の流れで読む 日本と世界の未来』より)

一人っ子政策が始まってから30年の間に、男の子ばかり望む親が増えて人口の男女比がアンバランスになったり、高齢者人口が膨れ上がる一方で労働力人口は不足したりするなど、さまざまな問題が噴出した。そのため2014年には「単独二子政策(夫婦どちらか一方が一人っ子の場合は第二子の出産を認める政策)」が導入された。2年後にはそれも廃止され、子供を二人産むことが合法になった。

それでも中国人、とりわけ中流階級の多くは、子供を二人持つことを望んでいない。都会では特に、一人の子供に多額の養育費をかけることが習慣化してしまっているので、子供を複数持つのは経済的な負担になるのだ。それに加えて精神面でのストレス、キャリアへの影響もあり、二の足を踏む人が多い。日本や韓国など多くの国でもそうであるように、少子化は長期的に見て、労働力人口の減少や若者世代への負担増など、さまざまな問題の原因になる。

日本と同様、アジア諸国は移民を嫌うという傾向がある。中国人、そして韓国人の多くは海外に移住しているが、自国への移民受け入れは皮肉なほどに少ない。この傾向は、将来人口減少を引き起こし、大きな問題を引き起こす可能性がある。

地方と都市とで広がる格差

さらには、地方と都市との大きな格差も問題だ。地方と都市とでは社会保障が異なり、それが両者の格差を広げているとも言われている。政府もそのことはわかっているはずだ。最近北京で開かれた会合でも、「この40年間で、都会の人たちはとても成功したが、田舎の人は成功していない」という主旨の発言があった。地方の人は、成功を求めて誰もが都会へ出て行ったのだ。

中国政府はいま、地方を助けるべくありとあらゆることを実行している。中国には3兆2000万米ドルという世界ランキング1位の外貨準備高(図2参照)があるから、財政支出を増やすことには問題がない。むしろ本当に必要な部分にどうやって金を回していくか、ということの方が問われるだろう。

図表2:外貨準備高は世界で1位だ(画像=『お金の流れで読む 日本と世界の未来』より)

銀行は、規模が小さかったり地方にあったりする企業に金を貸すことはしない。そういった企業の方でも、金を借りようとはしない。だから政府が手を差し伸べ、地方の生活水準を向上させ、消費を刺激する政策を取らなければならないのだ。

具体的には、起業を支援する「イノベーションセンター」を全国に建設したり、財政収入ではなく投資プロジェクトのリターンから返済する債券、特別目的債を地方政府には余分に発行させたりと、いろいろと手を尽くしている。特別なローンもできる。農業従事者であれば、いま大都市の北京では歓迎されるだろう。