「ライン」はカイゼンし続けるもの

現場で働いている作業者たちの様子を見ると、車体が大きいだけあって、乗用車よりも巨大な部品が多い。バンパーなどは特に大きくなっているから、そういうものは2人がかりで取り付け、リフターが補助をする。

「よっこらしょ」と力を籠めて行う作業は従来に比べると少なくなっている。

作業者にとって工夫の余地があるように見えたのは工場内の保管棚から部品をピックアップしてAGVにセットする作業だ。トラックは乗用車よりも部品の種類が多い。膨大な数の保管棚から部品をピックアップするには時間がかかり、また歩行距離も長くなってしまう。

この点をどうやってカイゼンしていくかはこれからの課題だろう。

わたしがそう言ったところ、阿曽は大きくうなずいた。

「生産ラインは日々、カイゼンして変えています。ラインは変わり続けるものです。ラインが完成することはありません」(敬称略)

野地 秩嘉(のじ・つねよし)
ノンフィクション作家
1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。著書は『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『ヤンキー社長』など多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。
(撮影=石橋素幸)
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