2つの「ものづくり改革」を実施

フレームにさまざまな部品を取り付ける(撮影=石橋素幸)

さて、トラック製造はキャブとフレームの2つの工程から始まる。

キャブ工程ではプレスした部品を溶接、塗装し、そのなかに座席を据え、ハンドルなどを組み付ける。

フレームとはトラックの背骨にあたる、はしご状の鉄材だ。ここにアクスル、エンジンなどをはじめ、さまざまな部品を取り付けて、最後にキャブを載せる。

日野自動車の従来の工場ではラインを大型と中型、トラクターヘッド(牽引車)の3つに分けて生産していた。だが、古河工場では1本の汎用ラインを設けて、大型、中型、トラクターヘッドの3種を混流生産にしたのである。ものづくり改革のひとつだ。

ラインを1本にして、混流生産にしたため、リードタイム(生産に関わる時間)が3割、少なくなり、また生産するためのスペースも3割減った。

「もうひとつのものづくり改革がモジュール化です」(同)

モジュールとはいくつかの部品をまとめてひとつの単位にしたもの。モジュール化した部品を組み合わせることで、多様なニーズに対応した生産が短時間でできるようになった。

「モジュール化のおかげで国内、海外へ部品を輸出するための供給リードタイムを7割も減らすことができました」(同)

F1レースのピット作業のような素早さ

海外のトラック需要が増え続けているから、基幹部品だけを国内の古河工場で造り、その他の部品は海外工場で製造する。そうして海外工場で組み立てれば、ローカライズしたトラックがこれまでよりも短い時間で顧客に届けることができる。

また、ライン作業の時間を短くするために、「外段取り」を増やしている。たとえばラインを流れるフレームに電気系統をつかさどるハーネスを取り付けるとしよう。以前の工場ではライン上でハーネスを合体させて取り付けていた。それを今ではラインの外ハーネスをつなげておいて、ライン上のフレームに一気に取り付ける。

見ていると、作業員の動きはまるでF1レースのピット作業のようだ。素早く、あっという間に仕上げてしまう。

また、溶接作業などにはロボットを活用し、組み立て作業にはAGV(無人搬送車)とリフターが活躍する。AGVは作業者に伴走し、その上には部品がセットされている。作業者は自分が歩くことなく、部品を手に取って、取り付けることができる。リフターは重い部品を取り付ける時の補助用具。この2つがあることで、人間がやる作業は相当楽になる。