「ガムが売れない」理由はスマホの普及かもしれない
問題の本質を考えることは、ビジネスの先行きを考える上でも役に立ちます。たとえば駅の売店で扱うガムの販売不振が続いていますが、この原因を味などの嗜好の変化と捉えてしまうと本質を見誤ってしまうかもしれません。
ガムが売れなくなった背景には、スマートフォンの普及もあると私は考えています。売店でガムを買う人のなかには、食べ物というより、時間つぶしのツールとして買っていた人も一定数いるはずです。そうすると、いくら味を追求したところでスマートフォンに勝つことはできません。売店で売れていた新聞や文庫本が売れなくなったのも、やはりスマートフォンの登場が原因ではないでしょうか。
若者のクルマ離れの理由も、多くの自動車メーカーが「若者に受け入れられる車を製造できていない」ことに理由を置き、数年前にそのような経営者の発言を耳にしたこともあるのですが、私は違う意見を持っています。
今の若者は、もっとも将来に不安を抱いている世代でもあります。自分の親が祖父母の介護をしている様子を見ていて、いずれ自分も老老介護をする将来イメージができあがっている。さらに年金も今の親世代ほど受け取ることができないと分かっているわけですから、たまにしか使わない車にお金を使う気持ちになれるはずもありません。
ビール離れは今後も進んでいく
一方、若者のビール離れもビールメーカーにとっては悩ましい問題のようです。各社は熾烈なシェア争いを続けており、広告や商品開発に多額の費用を投じていますが、根本的な問題解決には至っていません。
ビール離れの理由を、「今の若者は飲まなくなったから」と考えるのは拙速でしょう。なぜなら、アルコールそのものの消費量は、年によってはむしろ増えているからです。ビールの消費量は下がり、アルコールの消費量は増えている。これはつまり、消費者がビール以外のアルコール飲料を選ぶようになったということです。
昔から「とりあえずビール」という言葉がありますが、以前はビールを中心に飲むことに合理性がありました。ワインやウイスキーは高かったですし、焼酎はクセが強かった。ところが今はさまざまなジャンルのアルコール飲料が安価になり、品質も改良されています。そうすると、ビールだけにこだわる理由は失われますから、個人個人の嗜好に合わせてニーズが分散していくのは当然なことなのです。
お酒を飲むときに消費者が望むことは、「気持ちよくなりたい」「食事を美味しく食べたい」「お祝いで乾杯したい」など、いくつか考えられますが、ビールでなければ解決できない問題はありません。したがって、ビールでなくてはならない理由を見出だせない限り、おそらく今後もビール離れは進んでいくでしょう。