対象家庭は、今年だけで53万!
これから太陽光発電システムを導入しようという人は、現在の買取価格が10年間固定される点は従来と変わらない。「太陽光の2019年問題」と呼ばれたり、「卒FIT」と呼ばれたりして、いま大きな転換期を迎えようとしているのは、2009年11月頃に太陽光発電システムを導入した家庭だ。それ以降に導入した家庭も、今年11月から順次買取期間が終了する。具体的に、どんなことが起きようとしているのだろうか。
「2019年度に固定価格での買取期間が終了するのは、53万件、200万kW。23年度末までには累計165万件、670万kWに及ぶと見込まれています」
発電量670万kWといえば、原子力発電所6基分ないし7基分の設備容量に相当すると言われることもある。
「注意したいのは、原子力発電と太陽光発電では特性が大きく異なる点です。原子力発電であれば24時間ずっと動かせますが、太陽光で発電できるのは昼の時間帯に限られるうえ、晴れていなければフルに力を発揮できません。つまり必要なときに電力を得られなかったり、必要以上に電力を供給してしまったりといったことがあるわけで、原子力発電と同等に考えることはできないのです。ただ、それにしても無視できないほど大量の電力がいったん契約切れを迎えるわけですから、その行き場をどこに求めるかは大きな問題といえます」
三浦氏は「大きく二つの選択肢がある」と説明する。
「一つは、自己消費を拡大する道、もう一つは、改めて電気を買い取ってくれる事業者を選び、相対・自由契約で売電する道です」
これまで売電してきた家庭では電力が余っていたわけだから、前者の自己消費拡大をするには電力の消費スタイルを変更する必要がありそうだ。
「なんらかの方式で電力をためておいて、それを昼間以外に活用する方法が考えられます。一番イメージしやすいのは、蓄電池の活用でしょう。高効率な電気給湯器であるエコキュートの導入も有効です。将来を見据えれば、電気自動車のバッテリーに充電するといった活用法もあります」
ただし、いずれの場合も導入コストが大きいことが問題だ。
「蓄電池を活用する場合、寿命15年なら工事費込みで9万円/kWh、寿命10年なら工事費込みで6万円/kWhまで価格が下がれば、自家消費を行うメリットが出る可能性があります。国は2020年までに寿命15年なら9万円/kWhを目指していますが、2018年時点では18万円/kWhほど。しかも、いずれも工事費を含まない価格です。工事費を含めても9万円/kWhが最低条件となると、補助金を活用しない限り、2019年度にはとても間に合いそうにありません」
工事費は家の状況によって金額がまちまちであり見通しにくい。とはいえ、工事費抜きには導入コストをはじき出せないだけに「蓄電池価格」を見る場合、その点には注意が必要だ。