「商社マン妻」を経済的困窮に陥れた「夫」の無責任

現在、マリエさんの主な収入は、夫からの年金分割で受給できることになった年金など月15万円ほど。商社で働いていた夫の給料は高く、マリエさんが受け取っていた生活費も少なくはなかったが、子どもの教育費や贅沢が当たり前の生活で、毎月すべて使い切っていた。その上、まさか、将来離婚することになるとは思ってもみなかったので、貯金もしていない。また、離婚が決まった時にわかったことだが、夫にもほとんど蓄えがなかった。こちらも負けず劣らずかなりの浪費家だったようだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/tomazl)

退職金およそ3000万円は2分割したが、マリエさんの分は、実親の老人ホーム費用や治療費、葬儀や墓を作る費用などで多額の費用がかかり、残るお金は300万円程度。現在、家賃約23万円の賃貸マンションにひとりで住んでおり、このほかトランクルームなども借りていて毎月大赤字なので、その貯金もじき底をつく。

そうした経済的な不安に加え、マリエさんはいくつか持病などもあり、定期的な通院も欠かせず、その医療費はバカにならない。筆者は、毎月の収入の3割程度である4~5万円程度の 賃貸物件への引っ越しを提案した。というのは、クラフトアートの活動で一定の収入があるものの、材料費や個展を開くための費用などがかさみ、収支は常にマイナスだからだ。年齢的に収入を増やすよりも、まずは、家計で大きな割合を占める住居費のコストを抑えるのが先決である。

「自分の好きなことができる喜びは何物にも代えがたく、充実した日々を送っている」とマリエさんは言うのだが、夫との離別によって「アンダークラス」に転じてしまったのは誰が見ても明らかだ。結婚して専業主婦となった頃、将来にこんな人生が待っているとは考えもしなかっただろう。「私の人生はこんなはずではなかった」。そう感じているに違いない。

「アンダークラス落下組」をこれ以上増やしてはならない

今、マリエさんと同じように結婚して仕事は辞めたものの、子どもが成長したことで再び働きに出たいという女性は大勢いるし、結婚してからもずっと共働きという女性も少なくない。

マリエさんのような「アンダークラス落下組」が少なくない状況の中で、女性が結婚後も仕事を持ち収入を得ようという動きは、前述したリスク回避につながることだ。ただ、妻が働きに出る場合、夫や子どもなど家族からの協力や理解が欠かせない。

日本において、かつて主流だった専業主婦世帯に代わり、共働き世帯が増加している。しかし、「共働き世帯」は増えたけれども、「共働き社会」になったとは言えない。

共働き社会を実現させるためには、保育施設や家事支援サービスの拡充、放課後の児童クラブの整備、女性の働き方に中立な税・社会保障制度の見直し、女性登用の「見える化」など、社会的なバックアップは必須である。そして、それ以上に重要なのは、「夫は外に出て働き、妻は家を守る」といった固定観念の意識改革だ。

マリエさんのような「アンダークラス落下組」をこれ以上増やしてはならないと思う。

(写真=iStock.com)
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