身元引受人を菩提寺の住職に頼んだ
こうした終の住処をめぐる「老い支度」とともに、70代から始めた学習成果として、85歳時に、死去した父親の墓がある長年親交のある菩提寺の住職を受け取り人とした自筆遺言書を書き、その住職に、入院する時の保証人、身元引受人を引き受けてもらっている。
Yさん「お寺さんです。昭和6年に父が亡くなってから、ズーッとお付き合いのあるお寺さんなので。私が死んだら後を継ぐ者がいないのがわかっているし。私の死後も永代供養をして頂けるよう、私の資産を全部と遺言にも書きました」
ところで、こうした70代から始めた「身じまい」を、一人で考え選択し実行してきたYさんを「すごいなあ」と思ったのだが、さらに「すごいなあ、そこまで備えておくものなのか!」と感動さえ覚えたのが、変形性股関節症の手術で2カ月間の入院をする前に、Yさんがしていた「老い支度」と、その準備の綿密さだった。
Yさんは入院時にも準備を怠らなかった
長年痛みに苦しんできたが、ためらっていた変形性股関節症の手術を、先述のNPO所属の専門支援職者の強い勧めで決意したのだという。
Yさん「ほんと、準備が大変だったんです。私はひとり暮らしですから。新聞を止めて、宅配で取り寄せていた薬やお化粧品も電話で断って、電話番号は全部入力してありますから。それにベッドメーキングもして洗濯物も片付けて。
入院する時はまだ暖かい時期だったんですが、退院の時は寒くなって帰るんだから、入院する時に帰宅した時のことを考えて、ベッドメーキングまでして出たんです。手術直後は重い物を持てないかもしれないから、寝室まで厚手の物を持ってきておこうかとか。
それに、退院する時の荷物とか服とか靴とかも、できることは入院する前に準備しました。退院した日の食事にも困らないように、食べ物も冷凍しました。私はひとり暮らしですから」
それ以外にも、Yさんがしたことがある。Yさんは自宅のベランダで植木鉢に花を育てることを大きな楽しみにしている。そのために入院中、花に水やりをしてくれる人を確保し依頼するだけではなく、家主との交渉を済ませて入院している。