日産の運命はもはや政府に握られつつある

日産の川口均専務執行役員は11月20日、首相官邸で菅義偉官房長官と面会し、現状を伝えた。官房長官に民間企業の役員が自社の経営状況について説明に行くのも異例である。そこまで日産は追い込まれているのかもしれない。

同じ日、世耕弘成経済産業相とルメール仏財務相は電話で協議し、共同声明を発表した。内容は「日仏両政府は両国の産業協力の偉大な象徴の1つであるルノー・日産連合を力強く支援することを再確認した」というものだった。

日産の運命はもはや政府に握られつつある。フランス政府の出方次第では、経産省に根強い「日の丸自動車メーカーを守る」という論理が前面に出てくるかもしれない。その場合は日仏政府の対立が激しくなるだろう。

このまま時間を費やせば、19年間の再生努力は無になる

だが一方で、19年続いた日産とルノーの連携でプラットホームや部品の共通化は進み、グローバルな工場の連携体制も進んだ。自動運転などの技術開発の連携も深まっている。簡単には両社の関係を大きく変えることができない現実もある。

東京地検の動き、フランス政府の動き、日産社内の動き、経産省の思惑……。複雑な連立方程式をどう解いていくのか。短時間に解ける問題ではなさそうだ。

世界の自動車産業は電動化と自動運転などの進展で激しく、スピード感ある変化が起きている。そんな状況下で世界最大級の規模を誇る日産、ルノー、三菱自動車のグループだけが、経営体制が明確にならないまま時間を費やせば、競争力を大きく損なうのは目に見えている。19年間の再生努力を今回の事態は無にしかねない。

安井 孝之(やすい・たかゆき)
Gemba Lab代表、経済ジャーナリスト
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立、フリー記者に。日本記者クラブ企画委員。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。
(写真=時事通信フォト)
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