「自分にも関係があると実感した」(30代男性)

「ロコモ度テスト」を初めて受け、「立ち上がりテスト」で片脚で30cmの台から立ち上がることができて、「ロコモの兆候なし」と判定されたという30代の男性は、「ロコモの名前は、ネットや新聞などで目にしたことはあったけれど、どのようなものかよくわかりませんでした。実際にテストを受けてみて、自分にも関係があり知識を持っていたほうがいいと実感しました。現在のところロコモの心配はないと判定されたので、ほっとしています」と語った。

「ロコモ度テスト」を体験する丸の内のビジネスパーソン(撮影=プレジデント社書籍編集部)

また、「ロコモ度1」の判定を受けた50代の男性は、こう話す。

「ロコモという名称はテレビで見て知っていましたが、実際のテストを受けられてよかったです。ぱっと見では簡単にできそうな気がしたけれど、片脚立ちは意外に難しかったです。体重が重過ぎることが原因なので、ダイエットしようという意欲がわきました。『2ステップテスト』はよろけずにできたので、週1回のジム通いが功を奏していて、まったく運動していなければ『ロコモ度2』になってしまったと思います」

この日、「ロコモ度テスト」を体験した丸の内のビジネスパーソンは、男性17名、女性14名の合計31名だった。

働き盛りの体力低下は重大な将来リスク

10月8日の体育の日、スポーツ庁は「2017年度体力・運動能力調査」を公表した。65歳から79歳では男女ともに体力の向上が続いているのに対し、30~40代では男女ともに体力が低下傾向にあり、特に20~40代で「週1日以上運動する」と答えた女性の比率は、20年前と比較して10ポイント下がっているというものだった。

働き盛りの年代に体力低下の兆候があることは、日本の社会にとって将来の大きな不安材料だろう。忙しくても日常生活に運動習慣を取り入れなければ、「生涯現役」は危うい。

大江氏に、働き盛りの年代から日常生活で手軽に取り入れられるロコモ対策を聞いてみた。

かじやますみこ『人生100年、自分の足で歩く 寝たきりにならない方法教えます』(プレジデント社)では、大江隆史氏によるロコモとロコモ対策のさらに詳しい解説が読める

「日本整形外科学会では、ロコモを防ぐためのトレーニングとして、バランス能力を養う片脚立ち(左右1分間ずつ1日3回)と、下肢の筋力をつけるスクワット(1回5~6回を1日3回)の2つを推奨しています。それだけでは物足りない方には、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、歩くスピードを上げるなど、通勤時間を運動時間に変えることも効果があります」

「運動習慣に加えて毎日の栄養摂取も大切で、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素を毎日3回の食事から取ることが大切です。中でも、筋肉を増やすためにはタンパク質、骨を強くするためにはカルシウムだけでなく、タンパク質、ビタミンD(サケ、干しシイタケ)とビタミンK(納豆、青菜)が必要です。ビタミンDは日光を浴びることで体内でもつくられるので、天気の良い日は外に出て散歩や運動を心がけてください」

毎日の生活の中で、ほんの少しロコモを意識し日常の生活習慣にすることが将来の寝たきり防止につながると言えそうだ。

大江隆史(おおえ・たかし)
NTT東日本関東病院院長補佐 整形外科部長
1960年、京都府生まれ。85年、東京大学医学部医学科卒業後、東京大学整形外科医局入局。関連病院で研修後、東京大学医学部附属病院文部教官助手、東京大学医学部附属病院整形外科医局長、医療法人社団蛍水会名戸ヶ谷病院整形外科部長を経て現職。東京大学医学部整形外科非常勤講師も務める。後進の指導と臨床に携わりながら、患者にロコモについての啓蒙を続けている。2010年ロコモ チャレンジ!推進協議会の設立とともに副委員長、14年より委員長。15年より現職。最新著作に『相撲トレ 1日2分で一生自分の足で歩ける』がある。
(文=プレジデント社書籍編集部 撮影=プレジデント社書籍編集部 写真=iStock.com)
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