※本稿は、かじやますみこ『人生100年、自分の足で歩く 寝たきりにならない方法教えます』(プレジデント社)の第1章「寝たきりにならないための新常識」の一部を再編集したものです。
「人生100年時代」ロコモ対策は待ったなし
【かじやますみこ(ノンフィクション作家)】それにしても、なぜ最近になって運動器の疾患がそれほど注目されるようになったのでしょう。「腰痛は日本人の国民病」などといわれますし、昔から、街場の整形外科医院はお年寄りでいっぱいです。ロコモティブシンドローム(略称ロコモ)という新しい言葉をつくらねばならないほど、以前とは違う課題があるのですか。
【大江隆史(NTT東日本関東病院・整形外科部長)】背景にあるのは、やはりヒトの長寿化、社会の高齢化です。人間がそれほど長く生きることがなかった時代には、骨粗鬆症による骨折など運動器の疾患が起こる前に、誰もが寿命が尽きてしまいましたからね。だから学問的な研究もされてこなかったし、どれくらいの人が加齢による運動器疾患にかかっているかなんて、調べる人もいなかったのです。
しかし、いざ調べてみると、驚くべき実態が明らかになってきました。2017年に発表された吉村典子先生(東京大学22世紀医療センター ロコモ予防学講座特任教授)を中心とする大規模な疫学研究では、ロコモ度テストでロコモと判定できる人は、全国で4590万人にのぼると推計されたのです。
骨粗鬆症の人は1280万人(男性300万人、女性980万人)。70歳以上に限ると、95%以上の人が骨粗鬆症か変形性膝関節症か変形性腰椎症のどれか1つ以上にかかっていると考えられるそうです。「人生100年時代」といわれますが、運動器のケアをせずに100歳まで元気に暮らすことはほぼ不可能でしょう。その意味で、ロコモは非常に今日的な問題なのです。
【かじやま】4590万人ということは、日本人の「3人に1人がロコモ」といえますね。それもすごいですが、2017年の統計で「100歳以上の高齢者がすでに7万人近くもいる」との報道にも驚きました。10年前の約2倍、20年前の約8倍に増えていて、2050年には53万人を超えるとか。ロコモ対策は、まさに待ったなし! です。