その3 社員がうつ病になったときの方針を決めていない
社長として社員がうつ病になったときの方針を事前に決めていないことも指摘できる。できる社長は社員がうつ病になったときのことを想定して就業規則を刷新している。「うちの会社にうつ病の社員はいないから」と高をくくっている社長は、就業規則も古いままで社員がうつ病になったときにまったく役に立たない。仕方なく場当たり的な対応しかできず、しまいには感情的な対応をして訴えられる。「今まで大丈夫」は「これからも大丈夫」にはならない。
社員がうつ病になったときの対応は、事前に就業規則で決めておくことに尽きる。事後的に「うちではこういうふうにするから」では、社員も安心して治療を受けられない。
「社員がうつ病になったから退職してもらう」というのは、社長の姿勢として絶対に間違っている。うつ病は誰もなりたくてなるものではない。社員を守ることが社長の役割であるから、うつ病の社員も可能な限り守らないといけない。仮にやむを得ず退職となる場合でも、できるだけのサポートをしてあげるのが社長としての役割だろう。
社命で精神科に行かせるのはNG?
「咳が続くけど大丈夫か。病院に行ってみたらどうか」
このくらいの話であれば、どこの中小企業でもよくあることだ。でも、これが「ちょっと元気がないようだけど、精神科を受診してみたらどうかね」となるとどうだろうか。社長としても一瞬たじろぐかもしれない。社員から「なんで病人扱いするのですか」と、かえって「名誉毀損だ、侮辱だ」と批判されるかもしれない。言うべきかどうか悩んでいるうちに、社員の状況は日々悪化していく。
これはいわゆる受診命令を会社として出せるのかという問題である。一般的には就業規則に明記されていなくても、受診を命じることはできるとされる。それでもやはり就業規則に書いてあれば、自信を持って受診を求めることができる。この“自信を持って”というのは意外に大事なことだ。
メンタルヘルスに関わるものはデリケートな問題である。その場その場で検討しないといけないとなると、自信を持った対応ができず社長にとってもストレスになってしまう。
「就業規則にこう定めてあるから」と根拠を示すことができれば、社長としてもストレスが軽減され、自信を持って説明できる。根拠もなく、「とりあえずこうしました」というのは社員からの不信感にもつながり問題になりやすい。