せびる息子に毎回「これが最後よ」と金を渡す

このような共依存は、芸能人の家庭だけでなく、一般の家庭でも起こりうる。とくに親が金持ちで、世間体を人一倍気にする家庭では、子どものトラブルが表沙汰になることを恐れ、お金で解決しようとしがちだ。

私の長年の臨床経験では、息子の場合はギャンブル依存、娘の場合は買い物依存が多い。たとえば、30代の息子がギャンブルにはまって多額の借金を作り、母親に泣きついては払ってもらうことを繰り返しているケースがある。母親は息子にお金を渡す際に「これで最後よ」と告げるそうだが、息子は性懲りもなくギャンブルを続けている。

イネイブラーの典型その1)
ギャンブル中毒の息子にお金を払う母親

そのため、亡夫の遺産から息子に渡すお金を捻出していた母親も、さすがに最近は自分の生活だけで一杯一杯になり、息子に「もうお金がないの」と伝えたところ、「俺がどうなってもいいのか。ヤクザに殺されてもいいのか」と怒鳴られたという。

それ以来、息子の借金を返してやりたいが、亡夫の遺産が底をつきかけている状況では、今後の生活への不安が強く、もんもんと考えていたら夜眠れなくなった。それで、私の外来を受診したわけである。

私が「息子さんはもう大人なんだから、借金は自分でなんとかするのが筋。息子さんの借金を払ってあげる必要はありません」と助言したところ、「でも、私が払ってやらなかったら、息子はひどい目に遭うかもしれない。それに、警察沙汰になったら家の恥だから、私が払ってやるしかない」という答えが返ってきた。

それ以後も、自宅を抵当に入れてまで息子の借金を返すためのお金を工面しているようだが、これではいくら睡眠導入剤や抗不安薬を服用しても、根本的な解決にはならないと思う。

「仕送りをやめたら娘は水商売の世界に入ってしまうかも」

イネイブラーの典型その2)
買い物依存の娘に月20万円仕送りする母親

買い物依存の娘のために、月に20万円以上仕送りしている母親もいる。30代のこの娘は東京で独り暮らしをしており、自称モデルのようだが、そんなに仕事があるわけではないらしい。だから、オーディションを受け続けなければならず、そのためには衣装代、化粧品代、アクセサリー代、エステ代などがかかると訴えて母親にお金をせびるという。

もっとも、母親の仕送りは焼け石に水のようだ。高級ブランドの製品をクレジットカードで買いまくり、しかもリボ払いにしていたため、支払残高がかなりの額になっていて、しょっちゅう母親に電話で泣きつくらしい。