このように、ごみ清掃工場の立地は、都市部では非常にデリケートな問題なのですが、最新の環境技術をもってすれば、排気・排水・悪臭などによる工場周囲への公害の懸念はまずありえない時代なので、ごみ清掃工場の立地自体によるデメリットはもはやほぼ風評被害といえます。

一方で、稼働させたときに出る熱を利用して温水プールや温浴施設を稼働させて地元還元するのが当たり前になっているので、もはやごみ清掃工場は単なる迷惑施設というより生活利便施設の源という側面が強くなっているのが実態です。

「住みたいまち」上位の恵比寿も清掃工場の集中地区

なお、先ほど触れた杉並区のいわくつきの清掃工場は京王電鉄井の頭線高井戸駅至近にありますが(初代は1982年に完成、建て替えられた二代目が2017年9月から稼働開始)、この路線はJR渋谷駅・吉祥寺駅を結ぶ都内屈指の「ハイソな鉄道路線」です。余熱利用施設として近くに温水プールも立地しており、もはや清掃工場の煙突があろうが、周辺の資産価値に大きな影響は生じていないように思われます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/peeterv)

ほかにも、「住みたいまちランキング」で、トップグループ常連の恵比寿エリアも、実は1キロ圏に清掃工場が2つもある(渋谷清掃工場、目黒清掃工場)という、都内でも珍しい清掃工場集中地区であることはほとんど意識されていません。このうち、JR山手線などから煙突が見える渋谷工場については、諸事情から温水プールなど目に見えるかたちでの地域還元が行われていないのですが、まちのイメージにネガティブな影響を与える存在とはもはや考えにくいでしょう。

いずれにせよ、現在すでに存在するごみ清掃工場の周辺エリアは、それを理由に今後地価が下がっていくというわけではないので、これから移り住む人にとっては、生活利便施設が整っていることが多いという面からも、むしろお買い得といえます。