迷惑施設エリアへの転居、割り切ればお買い得

ただ、現実問題として、不動産価値は売り手と買い手の関係で決まるものである以上、今まで何もなかった(あるいは別の用途で使っていた)場所に、新たに迷惑施設ができれば、周辺の物件の不動産価値が多少低下してなんらかの経済的損失が生じる可能性は避けられません。たとえ、その施設による生活面への実質的な影響がゼロであったとしても。

一方で、そのことと一線を画して考えていただきたいのが、すでに存在する迷惑施設の近くの物件へ、納得ずくで転居を検討する場合です。風評被害による影響はすでに販売価格や家賃には織り込み済みなので(迷惑施設がなかった場合に比べて多少割り引かれている)、生活面で実質的な被害・不便がないとすれば、割り切れる人にとってはお買い得エリアといえないでしょうか。

可燃ごみ清掃工場は今や生活利便施設の源に

市区町村が集めた可燃ごみを持ち込み、まとめて燃やすごみ清掃工場は、行政が新設を計画しようとするとき、とにかく地元対策に気を遣う施設の典型です。

ちなみに、近年豊洲新市場問題で騒がしかった東京都では、もう風化してしまい思い出す人も少ないようですが、今から45年ほど前にごみ処理施設の立地をめぐって大騒動が起きています。

一方、そんな過去の歴史に学ばなかったのかどうかわかりませんが、21世紀に入ってからは東京都小金井市でもごみ清掃工場の立地で混乱を招いたことがありました。

もともと同市は、隣接する府中市・調布市と清掃工場を共同運営していたのですが、周辺住民からの反対などもあり、3市境にあった施設の現地建て替えを断念することとなりました。その後、実際に廃炉になるまでの期間は十分あったので、府中市・調布市はそれぞれ別の市と組んで新たに共同処理を始める手はずを整えました。

しかし小金井市は市内に処理施設を作る計画が頓挫し、府中市・調布市に対してやっぱりもとの場所でやりたいと言い出して断られるなど幾多の迷走を経て、多額のお金を払って他市にごみ処理をお願いせざるを得なくなったのです(最終的には、日野市内の施設で処理することで決着しました)。