国内事業の収益性向上には「省人化」が不可欠
井阪氏の指揮の下、同社は人件費増加に直面する店舗オーナーの負担軽減のために経営指導料(チャージ)を1%減額し、店舗網の拡大につなげようとしているが十分な効果は出ていない。
今後も、人件費の問題はセブン&アイの業績の足を引っ張るだろう。なぜなら、わが国では少子化、高齢化、人口の減少という3つがセットで進んでいるからだ。人手の確保は、どの企業にとっても無視できない問題である。需給が逼迫する中で人手を確保するためには、賃金を上げざるを得ない。
人手不足が深刻化する中で同社が国内事業の収益性を高めるためには、省人化への取り組みが重要だ。それは、店舗従業員一人あたりの付加価値創出額を高める(労働生産性を向上させる)ことである。機械に任せられることは機械に任せ、人にしかできない部分でより多くの付加価値を創出していくことができるか否かがポイントだ。
セイノーHDとの業務提携に要注目
セブン&アイが省人化を進めるためには、IoT(モノのインターネット化)に関する技術の導入を促進していくとよいだろう。IoTの導入促進は、セブン&アイの構造改革を加速化させるはずだ。国内ではITスタートアップ企業主導で、無線識別機能を持つICタグ(RFID)とクレジットカードを用いた小型店舗の無人運営が進められている。アマゾンのように画像認識技術を用いることでレジの無人化を実現することも考えられる。
省人化を進めることによって、セブン&アイは余った労働力を他の事業に活用できる。2017年4月同社は物流大手のセイノーホールディングスと高齢者向けの見守りと宅配事業で提携した。この取り組みの先行きは実に興味深い。
IoTで省人化を進めつつ、介護の知識を持った店員が宅配や相談に対応してくれるのであれば、一人くらし高齢者の安心感は高まるだろう。それは、セブン&アイが新しい需要を生み出すことを意味する。さらには、物流企業と協働して効率的な仕入れと宅配のネットワークを整備することも考えられる。