うまくいかなかった背景には、一気に物流拠点を広げようとしてコストが膨らんだことがある。また、物流センターを建てるだけでは、一朝一夕に機能させることは難しい。商品のピッキングなどの倉庫管理や正確な梱包や発送るなどはノウハウの塊であり、それを支える情報システムへの投資は膨大なものになる。
物流投資の差が成長性の差に
楽天の物流拠点は千葉県市川市に2カ所、兵庫県川西市に1カ所の合計3カ所での運営にとどまっており、延べ床面積の合計は15万平方メートル超だ。
一方のアマゾンは、堅実に物流拠点を整備して、日本では現在倉庫が15カ所ある(2018年6月)。今後も需要に応じて増設をするだろう。開示していない場所があるので延べ床面積はわからないが、アマゾンが2013年9月に稼働した小田原の物流センターだけでも延べ床面積は20万平方メートルだ。小田原1カ所で楽天の全面積を悠々と凌駕している。
配送としては、楽天もアメリカでスマートフォンを介した自動車の相乗サービスを手がける企業に出資したり、最短20分で届ける即時配送サービス「楽びん!」を始めたり底上げに躍起ではある。ただ、局地的には勝てたとしても、日本上陸以来、長年物流に投資してきたアマゾンをロジスティクスの面でひっくり返すのは難しいのが現実だ。
1990年代末から日本のEC業界を牽引してきたアマゾンと楽天だが、これまでの方向性の違いがより業績に鮮明に現れるだろう。
書評サイト HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大商学部卒。マイクロソフト社長を経て投資コンサルティング会社インスパイアを創業。書評家としても活躍。著書に『黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える』『成毛流「接待」の教科書 乾杯までに9割決まる』『AI時代の子育て戦略』など。