シャープと同じ「役割等級制度」は普及するか
肝心なのはヤル気を失わずに生産性をアップしていくことなのだが、図2を見てわかるように「従業員1人当たりの営業利益」は17年3月期の第2四半期にプラスに転じ、急ピッチで回復している。ただし、同社をウオッチするみずほ証券シニアアナリストの中根康夫さんは「在庫の圧縮、調達条件や長期契約の見直しなど、徹底的なコストの削減によるところが大きい」という。
今後の課題は前述したような取り組みで従業員のモチベーションアップを図り、既存・新規事業で売上高を拡大していくことである。
「その点で設備投資を示す有形固定資産への投資が18年3月期第3四半期ベースで前年同期比202億円増えている。リストラだけでなく、積極的な投資も行っていることの証左で、従業員のヤル気はアップするはずだ」と経営コンサルタントの小宮一慶さんは見る。中根さんも「鴻海はシャープの技術力や人材を評価しており、構造改革から再成長へのフェーズに転換する投資を行っており、その継続性に注目」と話す。
従業員を含めたステークホルダーから不満の声は聞こえてこない。「それも全員が納得するだけの成果を上げているからだ」と公認会計士の山田真哉さんはいう。今後、同社の経営基盤が磐石になっていくと、日本企業の間でも同じような役割等級制度を導入する動きが出てくるかもしれない。
メディン代表経営コンサルタント
中根康夫
みずほ証券シニアアナリスト
小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント
1995年に小宮コンサルタンツを設立し、代表取締役会長CEOに。著書は130冊を数え、累計発行部数は360万部を超える。
山田真哉(やまだ・しんや)
公認会計士
中央青山監査法人などを経て、現在は芸能文化会計財団理事長を務める。『女子大生会計士の事件簿』など著書多数。