経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「シャープと年収格差」について――。
賞与 最多で「8カ月」最少で「1カ月」
2016年3月期に312億円の債務超過となり、同年8月に東証1部市場から2部市場へ“降格”の指定替えという屈辱を味わったシャープ。しかし、同じ月に台湾の鴻海精密工業の傘下に入り、新しく就任した戴正呉社長の経営改革が奏功し、17年3月期は債務超過を解消、同年12月に東証1部へ見事に復帰を果たした。
その戴社長の改革の1つが「信賞必罰」の人事制度。17年度の賞与は16年度実績の2倍の平均年間4カ月分へアップしたが、一方で業績への貢献度に応じて最も多い人で8カ月、逆に少ない人で1カ月という差をつけた。総賃金に占める賞与の割合は大きく、従業員間での“年収格差”に直結する。
そんな大胆な改革に当たって導入されたのが「役割等級制度」で、この制度に詳しい経営コンサルタントの西村聡さんは「役割、つまり『仕事の価値』に応じて賃金を支払う制度で、基本的には『職務給』である。日本企業の多くは『能力の価値』に賃金を支払う『職能給』をベースに運用していることが多いが、むしろ職務給がグローバルスタンダードだ」という。
賞与で8対1格差の仕組み
たとえば、個々の仕事に応じたポイントをあらかじめ決めておく。そして、「8対1」の格差がつくよう再調整した社員の総獲得ポイントで賞与の原資を割り、1ポイント当たりの単価を算出し、賞与の支給額を決定していく(図1参照)。