目では見えなかったものまで見ることができる

スーパーハイビジョンともいわれる「8K」。聞いたことはあるが、4Kテレビが店頭に並び始めてからも、それほど時間は経っていない。「8Kはまだ先の話」──。そんな風に思っている人が多いかもしれない。しかし実は、8Kの実用放送がスタートするのは来年、2018年の12月。試験放送は2016年8月に開始済みだ。8K時代が着々と近付く中、確かな存在感を示しているのがシャープである。

すでにシャープは、2015年10月に世界で初めて8K規格に準拠した85型の業務用映像モニターを発売。今年 6月には、70型の8K映像モニターも発売している。HDR(ハイダイナミックレンジの略称で、映像が本来持っている明るさや色、コントラストを表現できる技術)にも対応済みで、現状8KのHDR対応モニターはシャープしか発売していない。放送局などが8K映像の“絵づくり”を行うにあたり、事実上、シャープのモニターが基準を提供している状況である。

宗俊昭広
シャープ株式会社
ディスプレイデバイスカンパニー
デジタル情報家電事業本部
国内事業部 事業部長

「8Kは現在のフルハイビジョン(2K)の16倍の解像度を持つ映像で“日本発”の規格」。そう説明するのは、シャープ ディスプレイデバイスカンパニーのデジタル情報家電事業本部 国内事業部 事業部長を務める宗俊昭広氏だ。およそ四半世紀にわたりテレビの商品開発に携わってきたという宗俊氏をして、「実際に8Kの映像を目の当たりにしたときは、その圧倒的な美しさにこれまでにない感動を覚えた」と言う。

フルハイビジョンの16倍の解像度、約3318万画素──。8Kの迫力を言葉で表現するのは難しい。ただ、それを見た人からは共通の声があがるという。「その臨場感や鮮やかさに加え、皆さん“立体感”があると言われます。かつてない超高精細な映像が、平面の中に奥行きや広がりを感じさせるのです」(宗俊氏)。

さらに、宗俊氏と同じ国内事業部の8K推進部長である高吉秀一氏は続ける。「8Kの映像は実物とほとんど見分けがつかない──。NHK放送技術研究所の実験でも証明されています。よく、“8Kの次は16Kの時代が来るのですか”という質問を受けますが、高精細さがもたらす“実物感”という意味では、8Kが一つの到達点。まさに究極のディスプレイといっていいと思います」。

高吉秀一
シャープ株式会社
ディスプレイデバイスカンパニー
デジタル情報家電事業本部
国内事業部 8K推進部長

確かにデモンストレーション映像を見せてもらうと、2人の言っていることがよく分かる。やや俯瞰する角度から写されたリゾートホテルのプールの映像。それはまるで、部屋の窓から実際にプールを見下ろしているようだ。また、相撲中継の映像。力士はもちろん、土俵を囲む観客が一喜一憂する表情まで見て取れ、自身もその場にいるような感覚になる。「8Kはその場の空気感まで伝わる、感じられるこれまでにないディスプレイです」(宗俊氏)。

「さらには、これまで肉眼では見られなかったものまで見ることができる。それが私たちの考える8Kの魅力です」と宗俊氏と言う。例えば、ルーブル美術館所蔵の1枚の宗教画のデモ映像。橋の上には、たくさんの人々が歩く姿が描かれている。しかし、画面が次第にズームアウトしていくとどうだろう。実は、橋自体が絵画の背景の一部として小さく描かれているに過ぎない。肉眼で普通にこの絵を見ても、橋の上の人々は決して見えないのだ。「まさに見えなかったものが見える。これまでに経験したことのない映像体験を提供する──。それが8Kなのです」(宗俊氏)。

自社一貫体制でないとできないことがある

メーカーとして、世界の8Kモニターをリードするシャープ。同社が他に先駆けて、文字どおり“画期的な”製品を生み出すことができた背景には、組織の力がある。液晶パネルからIC(集積回路)、基板、ソフトウェア、さらに生産、サービスまで、すべて自社で対応できる。これこそが、シャープの最大の強みといっていい。

「垂直統合という言葉は古くから使われますが、昔も今も、ゼロから新しいものを生み出そうと思えば、一貫体制が力を発揮します。同じ会社の人間であれば、何かあったとき、すぐに話ができる。試作品をつくったときも、直ちに評価ができる。そして、それをもとに『次にどうするか』を議論できる。そうした環境が、一つ一つの課題を解決に導き、優れた開発を後押しするのです」と宗俊氏は話す。

武田倫明
シャープ株式会社
ディスプレイデバイスカンパニー
デジタル情報家電事業本部
栃木開発センター
第二開発部 課長

開発の現場において、まさにその意義を実感している一人が、同社栃木開発センターの第二開発部で課長を務める武田倫明氏だ。「例えば、液晶パネルにしても、信号処理にしても、各部品の材料にしても、それぞれの専門家がすぐ側にいるということはやはり強みになります。各分野のノウハウがしっかり蓄積されているから、新製品の開発にあたっても、どのようなプロセスで、どうつくり込んでいけばいいかを迅速に判断できる。もちろん自身の開発との関係で気になる点があれば、顔を合わせ、必要に応じて実物を見ながら確認することができます。モノづくりにおいては、各パーツをどう組み上げて、一つの製品にしていくか。その“すり合わせ”が非常に重要な作業になりますから、何かあったときに直接コミュニケーションが取れるのは大きな利点です。仕様書や図面などのドキュメントでしかやりとりできない環境とはずいぶん違いますね」

「加えて、自社一貫体制の場合は次のプロセスのことを考えて開発を進めることができる。これも、質の高い製品をつくるうえで大事なポイントです」と高吉氏は言う。「別々の会社だと、どうしても『うちの責任はここまで』となってしまいがち。それぞれの担当、部門がお互いをフォローしながら、全体最適を追求していけることが私たちシャープのアドバンテージだと思っています。まさしく“One SHARP”で取り組んでいます」。

8Kの先駆者としての使命とは──

2018年の8K実用放送のスタートを目前に、シャープでは現在、8K製品のラインアップの充実に力を注いでいる。同社が映像製品の開発で常に念頭においているのは“どうすれば、見る人に感動を与えられるか”だ。

「真の意味で、それを実現するのが8K高精細テレビです。これまでにない本物感、目では見えないものまで見ることができる映像体験を一般のユーザーの方々に届けることがまずは私たちの使命。8Kの高精細表示はもちろん、これまで液晶テレビ『AQUOS』で培ってきた高輝度、高色域などの技術もしっかり生かしながら、一般のご家庭で使っていただける製品の開発を加速させています」(宗俊氏)。

さらにその上で、シャープは日本発の8Kをテレビ放送以外の分野でも活用する検討を始めている。例えば、医療。遠隔診断などの取り組みが進むなか、超高精細画像はその進展に大きく貢献するに違いない。そのほか、デジタルサイネージや美術品のデジタルアーカイブ、セキュリティなど活用領域はいくらでも考えられる。従来の枠組みにとらわれることなく、8Kの可能性を広げていくことが、リーディングカンパニーの役割。それがシャープの認識だ。

最後に宗俊氏は言う。「シャープという企業の本質を問われれば、非常にシンプルですが私自身は“チャレンジ精神”と答えます。これまで長く商品の企画に携わってきて何より実感するのは、未知の課題に挑んだからこそ得られた技術やノウハウが数多くあるということ。先駆者しか手に入れられないものが必ずあるということです。現在進行している8K製品の開発においても、その精神を忘れることなく地道に努力を重ねていきたい。そして、そこで得たものをしっかりと製品に投入し、新たな映像文化の発展に貢献したいと思っています」。

コーポレート宣言「Be Original.」のもと、輝けるグローバルブランドを目指すシャープ。重要な柱の一つである8Kの分野で、どんな未来を切り開いていくのか。これからが楽しみだ。

8K beyond the reality

人間の目と同じ、感動がそこにある。8K 究極のリアリズム

このサイトでは、8Kのもたらす新しい世界を「技術」「可能性」「放送」という3つの物語から紹介している。その他、困難の連続だったといわれる開発秘話が聞ける開発者インタビューも。このサイトを観れば、8Kがもっとわかる、もっと身近に感じられるだろう。

<現在Web限定CM公開中>
Realism, more real. by 8K Technology
超高精細な次世代液晶「8K」。今まで映すことができなかった映像の細部、さらに立体感や空気感さえも映し出す……。8K映像は、もう「美しさ」という単位では語れない。それ以上の、目には映らない「何か」も感じることができる未来の液晶技術。そんな「8K映像が伝えるべきもの」をテーマにしたストーリー。