加盟店が「キャッシュレスは導入できない」という理由をなくす
大手メガバンクから楽天、NTTドコモ、メルカリといったあらゆるプレーヤーが雪崩を打って、枯れた技術の「コード決済市場」をつかもうと躍起になっている。8月29日にはアマゾンジャパンもコード決済サービス「Amazon Pay」を発表した。百花繚乱の“レッドオーシャン”で、果たしてLINE Payはもくろみ通りナンバーワンを取れるのだろうか。
だが、「心配はご無用」と、LINE全体の戦略を統括するLINE取締役最高戦略・マーケティング責任者(CSMO)の舛田淳は落ち着いて答える。それは約4年もかけ、周到に「摩擦係数」を極限まで減らす努力と準備をしてきた自信の表れでもある。
「われわれが考える決済革命というのは、加盟店の皆さんがキャッシュレス決済を導入できないという理由をなくすこと。ボトルネックとなっていた摩擦係数が高いものは、われわれがなくしてみせる。同時に、ユーザー側にも使う理由を作るというのが基本的な考え方です」
中小規模の加盟店にとって最も高い摩擦係数だった導入コストや手数料は「アプリでゼロ円」によって解決させた。では、ユーザー側をどう動かすのか。あるいは、ゼロ円で追随してくる競合とどう差別化するのか。
舛田はLINEならではの勝ち筋をいくつか持ち合わせていると言う。1つ目は、日常的にスマホでLINEを使う「7600万人との顧客接点」だ。
LINEとLINE Payはもう完全に統合されている
「7600万人のLINEユーザーがいる。そこに対して金融サービスを乗せればみんなハッピーだよね、といった短絡的なことは、誰もわれわれの社内では思っていない。日常的にLINEを使っている人にこそ、便利で使いやすいLINE Payにしていかなくてはいけない」
舛田がそう言うように、LINEとLINE Payは不可分な設計となっており、LINE Payの機能は、すでにLINEアプリ下部にあるメニューの1つとして完全に統合されている。そのアドバンテージは大きい。
むろん、ヤフーや楽天、NTTドコモもLINEに匹敵する顧客接点を持っているが、スマホ決済に使う専用のアプリをダウンロードし、かつ決済時も専用のアプリを立ち上げる所作が障壁となる可能性がある。ヤフーや楽天は将来的に、既存の旗艦アプリ(「Yahoo! JAPANアプリ」や「楽天市場アプリ」)に、決済機能を統合する可能性もある。しかし、それでも、「ユーザーがアプリを触る頻度」という観点で、圧倒的にLINEに軍配が上がることは言うまでもない。
さらに、LINEそのものの価値である「個人間のコミュニケーション」と「決済」は、かなり相性が良い。