頭で理解した後は、ディベートが一番

──新しい価値を生み出すために、どのようなリーダーが必要でしょうか。

リーダーには、自分で手を出さなくても、価値を生み出す能力が必要です。上に上がれば上がるほど、見なければならない範囲は広がっていきます。だからこそ、組織を動かすには、問題に対する本質的な言葉が重要になってくるのです。

──そうしたリーダーにどんなマネジメント力を求めていますか。

例えば、マネジメントには「監督する」というイメージがありますが、辞書を引くと意味の1つとして「やりくりする」とあります。どんなに辛いことがあっても、どんなに状態や条件が変わっても、方向性を変えずにやりくりして、答えを出すことが、本当のマネジメントの意味なのです。それが上に立つ者に求められるマネジメント力だと考えています。

──会長自身がマネジメントを意識するようになったのは、いつですか。

私は事業部長になってから、マネジメントを意識するようになりました。事業部長になると、プロジェクトの実務に関われません。「事業部長として何をすればいいんだ」と困り、考えた末に辿りついたのが、「強い意志と柔らかい心」です。強い意志がなければ、価値を創り上げることはできません。例えば、お客様のところに話を聞きに行ったとき、価値を創って貢献したいという強い意志があれば、質問する内容も変わってくるはずです。それが結果として、ライバルとの大きな差を生むのです。「意志あるところに道あり」という言葉があるように、結局、意志がなければ価値は創り込めません。強い意志を持っていろいろなことに当たる。それが「価値を創り上げる力」につながっていくのです。

一方、「柔らかい心」とは、感動するくらいの心の余裕を持つということです。それは感受性と言ってもいい。例えば、花を見て「なんて美しい花なんだろう!」と心の底から感動できるかどうか。そうした感受性を持つことが「価値を受け取れる力」につながっていくのです。いわば、自分で価値を受け取れる能力があればこそ、価値を創り上げる能力も高めていくことができるのです。

──社内勉強会では会長自身が先頭に立って人材教育に当たられていますが、そうした場で重視されていることとは何でしょうか。

人材教育では頭で理解した後に腹落ちする段階が必要です。頭で理解しても、実際に行動しなければ深い理解は得られません。これはものすごく難しくて、時間もかかる。ただ、早く腹落ちさせるためにいい方法があります。それはディベートをすることです。実は、会議で反対意見を述べる人ほど納得するのも早いのです。反対するということは、それだけ強い興味を持っているということ。説得されて物の見方が変われば、途端に自分のやるべきことを意識するようになるのです。