戦没者を祀る国立施設へ! 政治家は知恵を出せ、行動せよ!

戦後、この施設は、旧軍関連モノとして厚生省(現・厚生労働省)が所管しようとした。厚生省は遺骨収集事業や恩給事業、戦傷病者戦没者遺族等援護事業を所管していたのでその一環としてのことである。ところがGHQが待ったをかけた。この墓地を国が特別扱いしてはならない、端的にいえば国をあげて祀ってはならない、と。そして靖国神社の一宗教法人化に合わせて、旧陸軍省墓地は、財務省所管や厚生省所管の「普通財産」にされてしまった。

日本政府はGHQの睨みを恐れたのか、この旧陸軍省墓地からは距離を取り、地方自治体などへ譲渡したり、無償で貸し付けたりする形をとった。国の責任放棄、地方への責任の押し付けだね。他方、地方自治体も責任感なし。税を投入することなく、放ったらかし。その典型が大阪の真田山墓地だ。もちろん、この真田山墓地が一時、靖国関連施設のような形になっていたこともあり、憲法上の政教分離規定から、大阪府・市がお金を入れることができなかった事情もある。

それでも政治家や官僚が知恵を出せばなんとか方法を見つけることができたのかもしれないが、放ったらかしのままだった。そして墓地は荒れ放題。見かねた地域住民の皆さんや、企業の皆さん、仏教界の皆さんが力を合わせてお金を出し合い、ボランティア活動によってある程度の整備を行い、維持管理をして下さるようになった。

それでも税の投入なく、ボランティアだけで、あの広い墓地を維持管理するのは難しい。雑草も生い茂り、墓石は朽ちているものもたくさんある。ボランティアの皆さんの努力によって荒れ放題という状態を脱することはできているが、十分に整備され、手厚く祀られているとはとても言えない状況だ。なんとも寂しい状況。さらに納骨堂があるんだけど、これもボロボロ。耐震性も全く満たしていない古い倉庫という感じ。ここに特に日中、太平洋戦争で命を落としたとされる方々の遺骨もどんどん集められてきた。しかしきちんとした保管施設となっていないので、壁に乱雑な棚が設けられ、そこに無造作に骨壺が置かれている。そしてその棚が納骨堂の壁や柱を構成しているという、今では完全なる違法建築状態。

国のために命を捧げて、そして国からこの扱い。これはいくらなんでも酷すぎる。あまりにも酷すぎて、悲しくなった。もちろん知事、市長として何もしなかった僕の責任も痛感した。

(略)

この真田山墓地にはA級戦犯は祀られていない。ゆえに首相や天皇陛下が参拝しても、中国、韓国からとやかく言われる理由は全くない。年間数千万円の維持費で今よりもはるかにきれいに整備できる。10億円もあれば立派な納骨堂に建て直すことができるし、その他のハード面の整備も大掛かりにできる。

国家の背骨のためには安いもんじゃないか。ちょっとした国や地方の無駄遣いを削れば、これくらいのお金は用意できるだろうし、国会議員の給料やボーナスを削るだけでも十分捻出できる。

自己陶酔に浸って靖国参拝している国会議員よ、国士気取りで強硬路線を貫く自称インテリたちよ、まずは大阪の真田山墓地に来い。そしてこの現状をなんとかするために知恵を絞って行動せよ。国のために命を落とした方々を、国をあげて祀ることができるような国になってからこその憲法9条改正論議だ。真田山墓地の整備に大した額のお金は要らない。国のために命を落とした兵士を国をあげて祀る国立の施設にすればいいじゃないか。政治家やインテリたちだけでなく、多くの国民の皆さんが足を運ぶ墓地にすべきだ。政教分離をクリアするやり方はいくらでもある。これこそ政治家の仕事だ。

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(ここまでリード文を除き約3500字、メールマガジン全文は約1万2100字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.116(8月21日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【今考える敗戦の意義〈2〉】旧陸軍墓地を荒廃から救え! 政治家の「ファッション強気」が有害な理由》特集です!

(写真=iStock.com)
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