田村さんに金額の内訳を尋ねると「長男の責任として」「頻繁に見舞いに行けず、申し訳なくて」と要領を得ない回答。詳しく聞けば、介護サービスにかかる費用も生活費も親自身の年金や貯蓄で賄われている。つまり田村さんからの仕送り5万円は、単なる「親のお小遣い」なのである。

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なるほど、長男として親孝行したい気持ちはわからないでもない。子どもが独立したことで家計に余裕ができ、気が大きくなったせいもあるのだろう。

だが、このまま5万円もの仕送りを続ければ、田村さん自身の老後資金が危ういのは、火を見るより明らか。まして女性の4人に1人が95歳、男性も90歳まで生き残る超高齢化時代である。親のためにと身銭を切っても、それが一時で終わらず、10年、20年と続く可能性もある。このまま親の老後を優先すれば、自分たちの老後が描けなくなるかもしれない。そのツケは田村さんの子どもに及びかねない。

渋る夫をなんとか説得するかたちで、親への仕送りは一旦ストップすることにした。加えて、見舞いに行く際の交通費や、時折親に買ってあげる生活用品、手土産などの実費は、夫のきょうだいとの相談のうえ、領収書をもらって折半する、交通費は航空券ならLCCやJALの「介護帰省割引」など、最も安い方法を使うようルール化した。これまでは長男である田村さんと妻が金も手間もかけていたが、長男だからとすべてを抱え込んでいたら身がもたない。今後はきょうだい3人がローテーションで親元を訪ねることにし、介護の状況によって先の体制を検討することに。

こうして家計を介護費用から解放した後に、老後資金を貯める計画を練ることにした。

現在55歳の夫は、60歳で定年を迎えた後も再雇用で働く予定だが、収入は半減する公算が高い。したがって貯金するなら、これから5年が「最後の勝負」の時期である。

最低必要とされる老後資金を3000万円、また退職金が一部上場メーカーと同水準の1500万円出ると仮定しよう。現在の貯金額は500万円だから、これから5年で1000万円を貯める必要がある。つまり年間200万円ペースの貯金である。そのうえ、住宅ローンの返済が75歳まであるため、その繰り上げ返済も急がねばならない。