2つ目の地雷原であるアメリカ経済も綱渡りの局面が続いている。オバマ政権は医療保険改革などニューディール的な総合経済対策(オバマプラン)を行ってきたが、雇用情勢に改善の兆しはなく、政府が無駄遣いをしている間は何とかもっているが、無駄遣いをやめると途端に景気が悪化するという“麻薬中毒”のような悪循環に陥っている。
オバマプランによるバラマキと的外れなアフガニスタン派兵で財政は急速に悪化した。アメリカの場合、個人のクレジット信用枠のように国家債務の上限が法律で決められている。
もし上限を超えたらどうなるか。個人の信用枠と同じでこれ以上金が借りられなくなる。要するに国債が発行できなくなるし、お金も刷れなくなる。当然、資金繰りが行き詰まるから年金も医療費も公務員の給料も支払えない。国家のサービス機能は滞って、アメリカ社会は大混乱に陥る。もっと問題なのは国債の償還や利払いができなくなることだ。デフォルト(債務不履行)という事態になれば米国債は暴落し、基軸通貨であるドルの信認も急落する。
オバマプランを実行すると債務上限をバーストするということで大騒ぎになったが、厳しい財政再建策と組み合わせて債務上限を引き上げることでオバマ大統領と米議会が合意し、最悪の事態は回避された。しかし財政再建の見通しの不透明さから、米国債の長期信用格付けが歴史上初めて最高位の「AAA」からワンランク引き下げられ、その余波が世界同時株安という形で世界の金融市場を襲った。
引き続き、債券市場の下落やドル売りなどの懸念材料は尽きない。爆弾の導火線が5センチ短くなったというのがいまのアメリカ経済の状況だ。ルーズベルト張りのオバマニューディールはいまのアメリカに適しているのか、そもそも可能なのか、という議論が12年の大統領選の主要テーマとなるだろうが、議会に対する指導力でも、経済政策でも実績を挙げられていないオバマの再選はほぼ絶望的となっている。
中国の場合、他の先進国の危機とは状況が違っていて、国家債務は非常に少ない。しかも土地は共産党が持っている。その土地を農民から収奪し、商業用地に指定換えしてリースで切り売りするのが、これまでの中国の経済成長マジックだ。各都市の税収の約半分は土地の転売益で、それを使って基盤整備し、都市の発展を競ってきた。
土地の値段が上がれば儲けも増えるから中国政府もバブルを許容してきたわけだが、これまた正常な神経が麻痺する“麻薬”である。庶民も負けじとこの麻薬にドップリ浸かり、国全体で8000万戸もの投機用マンションが空き家になっている。いま、この不動産バブルにかげりが出ている。
また中国の各都市は、土地の転売益が入ることを前提に民間銀行から派手に借り入れている。その支払いが滞るようになり、土地バブルの収束とともに中堅都市がパンクするのではないかという懸念が出てきている。中国ハイパーバブルと土地マジックが終わりかけている兆候だろう。リーマンショック以降の世界経済は完全に中国頼みなだけに、バブルが弾けて中国経済に急ブレーキがかかったら、世界は一気に負のスパイラルに突入するだろう。