日本人の「サービス精神」に驚く

――学ぶべき課題先進国だからこそ注目されていて、その分野、サービスについては「日本すごい」と思われている。

そうです。昨今の経済成長で自信満々の中国人ですが、日本の上位5%の最先端技術と、サービス精神は手放しで称賛します。例えばダイキンの空気清浄機。最後の最後の細やかな最先端技術は中国ではなかなか実現できず、一目置かれているからこそ、売れている。ただ、たいていの製品は残り95%の性能があれば十分なので、大きな問題はないとも思っています。日本人は繊細で趣味的だな、という印象を持っているんです。

一方で、日本人の「サービス精神」や、弱者をいたわる気持ちについては、中国人は純粋に「自分たちに足りないものだ」と思っています。爆買いで来日した中国人は、「日本のお店に行くとバイトの店員からも、しっかりとしたサービスを受けられる」「日本は静かで安全だ」とびっくりするんです。そしてその極致が、老人介護サービスでしょう。

日本人の「優しさ」がビジネスを生む

――そのあたりに、中国ビジネスのチャンスがありそうですね。

中国は厄介な隣国ですが、日本はうまく「活用」していかなければいけません。だから、日本のビジネスパーソンは、サービス業で働く人たちの優秀さをきちんと評価して、しっかりと対価を払うことが必要ではないでしょうか。そうして社会を分厚くすることで、国の価値を高めていく。

グローバルに広がっていく最先端の技術と違い、介護福祉の分野は言葉の問題がありますから、老人介護サービスや労働力を日本から輸出したり、中国人が日本の施設に来たりすることはまだ難しい。ですが、将来的には自動翻訳の発達で問題は解決するかもしれません。

例えば、老人向けの施設や食事のサービスを突き詰めて、その枠組みや権利を中国にも輸出する。最先端のAIやロボットの技術を活かした介護サービスを生み出す。そのような「弱者をいたわる」発想は現状の中国人にはありませんから、「30年後の5億人市場」に対する絶好のビジネスチャンスかもしれません。優しさは日本人の強みですよ。

(取材・文/林でのほ)
近藤大介(こんどう・だいすけ)
ジャーナリスト。1965年生まれ。埼玉県出身。東京大学卒業。国際情報学修士。講談社入社後、中国、朝鮮半島を中心とする東アジア取材をライフワークとする。講談社(北京)文化有限公司副社長を経て、『週刊現代』編集次長。Webメディア『現代ビジネス』コラムニスト。『現代ビジネス』に連載中の「北京のランダム・ウォーカー」は、日本で最も読まれる中国関連ニュースとして知られる。2008年より明治大学講師(東アジア論)も兼任。
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