農機具の操作は、動画サイトで
現在は、ここで春はイチゴ、夏はトマト、秋はジャガイモやビワ、冬はネギなど、さまざまな作物に挑戦する。1人暮らしでフリーという仕事柄、繁閑はあるが、時間は捻出しやすい。
「農業をやるにはこの土地は最適です。冬がとても短く、気候が温暖なので、ほぼ一年中栽培ができます。山梨や栃木で農業をする知人もいますが、12月から3月半ばまで活動できません」
現在は「草刈り機の操作なら任せて」というほど上達したが、意外な“師匠”がいた。
「最初は動画サイトが役立ちました。現在は農機具メーカー作成の使い方動画や、個人が作成した操作動画があります。これを繰り返し視聴して安全面も学んだのです」
筆者はかつて、福島県で先祖代々の休耕田を再開した60代の知人男性(当時)に取材したことがある。東京ではスポーツ紙の編集局長だったが定年で退任。その後も編集委員を委嘱されて東京都内との二重生活を続けていた。取材時の次の言葉が印象的だった。
「近隣の農家の人は、作業内容でわからないことを聞けば親切に教えてくれますが、全体の流れを体系立てては教えてくれません。当初はなぜだろうと思ったのですが、やがて理解できました。長年の経験則で、問題が生じれば対応する手法だったからです」
動画で学ぶ野島さんの手法は、この当時から進化したと感じた。
八郷地区の近隣住民は親切で、作業時に声をかけられることもあるという。地域農協「JAやさと」も協力的で丁寧に教えてくれる頼もしい存在。そうした地縁にも恵まれたようだ。ただし、野島さんなりの学ぶルールがある。
「いい大人が、何の予備知識も持たずに聞くのは相手に失礼です。いまはネットを検索すれば情報が得られる時代。私なりに知識を深めてから具体的に聞いています」
東京での仕事をやりくりしながら好奇心旺盛に新たな栽培に取り組むがガツガツしない。「農作物はつくる人に似ると思います。ゆったり育てるのがモットー。かといって無視はしないで目をかける“ゆとり栽培”です」。今後は「農業の比重を高めつつ、茨城でもメークの仕事を始めたい」と言う。