不完全なままリリースされたアプリ
2013年7月に配信された最初のバージョンのアプリは、商品の検索機能がないなど、かなり不完全なものだった。極めつけが、商品が売れても、そのお金を引き出せない、という謎の仕様。実は、売れた商品の代金が振り込まれる出品者の銀行口座を登録する画面作成が間に合わず、ないままリリースした。しかし、これは意図的なものだ。
当時のルールでは、月に2回、締め日を設け、そのタイミングで出品者の銀行口座に入金することにしていた。そこで、「最初の締め日まで2週間の猶予がある。であれば、とりあえずアプリを出して、2週間以内にアップデートをかけて銀行口座の登録画面を完成させればいい」と割り切り、アプリのリリースを2週間早めた。
「たぶん、検索機能や口座登録画面の完成を待っていたら、結果としてアプリのリリースが1カ月、2カ月と遅れていたと思います。それでは負けると思っていて、たぶんタイミングへの危機感がすごかったんでしょうね」
並みの経営者であれば、「2週間後でもいいじゃないか」と考えそうなところを、そうはしない。普通じゃないこだわりは、資金調達にも垣間見える。(文中敬称略)
<後編に続く>
フリーランス記者。1999年慶應義塾大学総合政策学部卒業、日経BP社に入社。以来、IT・ネット業界の動向を中心に取材。日経ビジネス、日経ビジネスオンライン、日本経済新聞電子版などの記者を経て、2018年4月に独立。著書に『任天堂 “驚き”を生む方程式』(日本経済新聞出版社)、『BUZZ革命』(文藝春秋)。