真の「オールジャパン」体制で戦う必要がある
音声認識AIには、モバイルのインターフェース、アレクサのようなスマートホームでのインターフェース、そしてクルマのなかのインターフェースと、3つの領域があります。ただし、スマートホームからスマートカー、さらにはスマートシティまでのエコシステムをおさえるとなると、トヨタ単体では困難な領域。そこでは業界の垣根を超えることが必要になるでしょう。
それこそ、トヨタ、ソニー、あるいはパナソニックなどが手を組むような、真の「オールジャパン」体制で、モバイル×ホーム×クルマの音声認識AIのプラットフォームを全力で取りにいくべきではないでしょうか。すでにスマートホームのエコシステムとなっているアマゾン・アレクサに対抗するのは単独企業では簡単ではないことを、日本企業は再認識する必要があると思います。
「トヨタは自動織機の発明により創業した会社」
「CASE」の「A」、自動化は出遅れ気味です。タクシーやライドシェアなどに利用される「サービスカー」と、自分が所有・運転する「オーナーカー」とを比較した場合、「オーナーカー」のほうが自動運転車を開発・実用化するハードルは高くなります。「サービスカー」であれば地域限定で走らせることもできますし、ドライバーの人件費が不要になるのでライドシェア会社は多少高額でも購入するかもしれないからです。トヨタがメインで生産しているのは、もちろん「オーナーカー」。そこがトヨタと、グーグルなどのメガテック企業やウーバーなどのライドシェア会社との決定的な違いです。
何よりも見逃せないのは、トヨタの出自です。CES2018で豊田社長はこのように語りました。
「トヨタはもともと自動車ではなく自動織機の発明により創業した会社であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。私の祖父である豊田喜一郎は、当時多くの人が不可能だと考えていた、織機を作ることから自動車を作ることを決意しました」
異業種戦争でありテクノロジー企業側が有利と見られがちなCESという場において、自分たちは再び異業種の会社として次世代自動車産業での戦いに臨む決意を示したものであると私は感じました。
その一方で、トヨタ生産方式の本質の一つは自働化。もともとの自動織機の会社だった時代、豊田佐吉が「自ら働く繊機」という意味を込めて、その機械を「自働繊機」と命名し、当初の社名もしばらくは豊田自働織機製作所になっていたそうです。創業者の精神を大切にする豊田社長であれば、「自ら働く自動車」である自動運転車を中核とする次世代自動車産業は自分たちこそが創るのだ、という使命感に持ち溢れているのではないかと想像しています。