レンタカーの店舗網を活用してライドシェアに乗り込むか

「CASE」の「S」、サービスの領域では、「モビリティ・カンパニー宣言」に続くイー・パレット構想のほか、サービスを全方位に広げようとしています。国内では、日本交通傘下で配車アプリを開発しているジャパンタクシーに75億円を出資することで合意、配車支援システムの開発や走行データの活用で提携を進めます。

また、レンタカー市場は欧米では独立系レンタカー会社がシェアをおさえていますが、国内ではトヨタレンタリースが王者。ライドシェア会社への出資、さらに自社でもライドシェアの実証研究を行っていることから、いざとなったら、駅前など利便性の高い立地にあるトヨタレンタカーの店舗網を活用してライドシェアにも乗り込めるポテンシャルを秘めています。

2017年12月には、トヨタレンタリース東京と、法人向け自動車リース事業を展開するトヨタフリートリースを統合、新会社「トヨタモビリティサービス」を設立すると発表しました。ライドシェア会社は、トヨタが日本国内でライドシェア事業が展開できていないとしても決して侮るべきではないと思います。

「CASE」の「E」、つまり電動化においては、トヨタグループや業界構造の維持を考えるあまり、思い切ったシフトができなかったという背景がありました。しかし、先ほど触れたように、トヨタはEVとその量産の技術において他のプレイヤーより優れた潜在力をもっています。また、黒字化のカギを握る電池でも世界最大手のパナソニックと提携。中国勢が海外勢を量で圧倒している状況を質でも凌駕し始める前に、トヨタが巻き返しできるかどうかの勝負となりそうです。

田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティングおよびリーダーシップ&ミッションマネジメント。上場企業の社外取締役や経営コンサルタントも務める。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』など。
(写真=時事通信フォト)
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