日本唯一のユニコーンが福岡に拠点

牧野洋『福岡はすごい』(イースト新書)

日本企業はどうなっているのか。1社だけである。フリーマーケットアプリを運営するメルカリだ。2018年になって同社は東証マザーズ市場への上場を決定(上場予定日は6月19日)。上場すれば時価総額は2000億円を超えるとみられている。

世界を見渡すと、スタートアップ育成競争で日本は大きく立ち遅れているわけだ。日本国内で地方都市が東京と張り合って競争している場合ではないということだ。だからこそ高島はつねに海外動向を注視しつつ「井の中の蛙で満足してはいけない」と肝に銘じているのである。

そんな思いが通じたのだろうか、2017年2月には国内IT4社が福岡市内で共同記者会見し、福岡進出を発表した。高島も同席し「バレンタインデーに私の思いに応えてくれました。大変うれしく思います」と歓迎のあいさつ。発表日は2月14日だったのである。

福岡からアマゾン級の企業が出てくるか

注目すべきは、4社の中にメルカリも含まれていたということだ。同社が福岡市内に設けるカスタマーサポートセンターは東京、仙台に続いて国内3番目の拠点となる。福岡にユニコーンは誕生していないとはいえ、少なくとも日本唯一のユニコーンが福岡を重視しているということだ。

さて、もともとはシアトルのスタートアップだったマイクロソフトとアマゾン。前者がシアトルに本社を移したのが1979年、後者がシアトルで創業したのが1994年である。2018年2月14日、アマゾンは時価総額でマイクロソフトを初めて追い抜いた(時価総額7000億ドル、1ドル=110円で77兆円)。シアトルで創業してから24年たっている。

現在の福岡で生まれたスタートアップが24年後の福岡でアマゾン級の企業に成長しているかどうか。それは誰にも予言できない。一つ言えるのは、高島が「日本のシアトル」を目指して「スタートアップ都市」を宣言したことで、福岡には少なくとも変化の兆しがはっきり芽生えているということだ。(文中敬称略)

牧野 洋(まきの・よう)
ジャーナリスト
1960年生まれ。慶応大学経済学部卒業、米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修了。1983年、日本経済新聞社入社。ニューヨーク特派員や編集委員を歴任し、2007年に独立。早稲田大学大学院ジャーナリズムスクール非常勤講師、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)理事。著書に『米ハフィントン・ポストの衝撃』『共謀者たち』(河野太郎との共著)『官報複合体』『不思議の国のM&A』『最強の投資家バフェット』など。
(写真=時事通信フォト)
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