登山人口は減っているのに遭難者は増えている

【田原】そもそもの話を聞きたい。どうしてこのサービスが必要なんですか。紙の地図でもいいじゃない?

【春山】もちろん紙の地図も必要です。スマホは電源が切れたら使えませんから。でも、紙の地図にはGPS機能がないので現在地を直感的に把握しにくい。道に迷うなどの遭難防止を考えると、スマホを登山GPS機器として活用したほうがいいと思いました。

【田原】遭難防止に役立つわけね。いま登山者は増えているんですか。

【春山】いえ、減っています。最新のレジャー白書によると日本の登山人口は約630万人。この7年ほど減少傾向です。

【田原】そうなんですか。じゃ、山の事故も減っている?

【春山】それが逆なのです。道に迷うなどの遭難者は、いま年間約3000人くらいで、過去最悪の数字です。

【田原】完成したアプリは、どういう形で発表したのですか。

【春山】登山者が集まる場所や登山口でYAMAPのパンフレットを配ったりして認知を広げていきました。反響が高まったのは、14年にグッドデザイン賞の「ものづくりデザイン賞」をいただいてから。いくつかのメディアに取り上げていただき、ユーザー数がグッと増えました。

【田原】ユーザーはいまどのくらい?

【春山】ダウンロード数が85万です。登山人口が約630万人なので、1割以上の登山者の方にYAMAPを利用してもらっている計算になります。国内で最大規模の登山アプリになりました。

【田原】ほかにも登山アプリはあるんですか。

【春山】あります。ただ、山でも現在地がわかるツール的な機能と、山を趣味にする人たちが集まるコミュニティ的な場の両方を提供している登山アプリはYAMAPが先駆けです。

【田原】コミュニティ的な場を提供するって、どういうことですか。

【春山】登山愛好家が集まる交流サイトをイメージしてもらえればわかりやすいかなと。同じ趣味を持つ人同士がつながって、山に関する情報交換ができる。また、ネットだけで閉じず、リアルな場でも交流の機会をつくっています。17年は「YAMAP感謝祭」と称するファンミーティングを全国10都市で開催しました。