2次会、3次会で女性部下と1対1になる可能性
セクハラ研修で常に言われる禁止事項が、「上司と部下との1対1の飲み会」だ。上司が部下の仕事上の相談に乗ること自体は問題ではないし、むしろ推奨されるべきだが、そこにアルコールが入るとトラブルの原因になる。
IT企業の人事部長はその理由についてこう語る。
「異性の部下との1対1での飲み会禁止は今では企業の常識です。管理職のコンプライアンス研修でも繰り返し、そのことは伝えています。1対1で飲みに行った場合、たとえ何もなくてもセクハラを訴えられれば抗弁できません。リスク管理の観点からも飲みに行くのはよくありません。部下の相談に乗るのであればランチ程度に控えるように指導しています」
日本企業でも銀行は、異性との1対1の飲み会に厳しいようだ。大手メガバンクの元人事課長は「出世にも響く」と指摘する。
「部下の女性と飲みに行くことは、銀行では完全にアウトです。もし2人でいるところを別の社員に見られれば、すぐにウワサのネタになりますし、そのウワサは人事の耳にも届くでしょう。そうなれば管理職として脇が甘いと判断され、昇進は見送られます。セクハラ行為があったかどうかではなく、そうしたリスク行為をすることがマイナス評価されるのです」
▼「もう1軒」と誘う上司がセクハラ通報されやすい
いくらリスク管理とはいえ、何やら窮屈な感じもしないではない。もちろん上司と複数の女性の部下、あるいは複数の男女の部下との飲み会であれば特別に問題視されることはない。しかし、その場合でも注意が必要だ。1軒で終わるのであればいいが、2次会、3次会の流れで1対1になる可能性があるからだ。しかも酒量も相当増えている。
前出の外資系医療機器メーカーの人事担当役員はこう注意する。
「月に1回程度、社員の懲戒案件を裁いていますが、セクハラ事案のケースでは職場の2次会、3次会で上司と女性部下が1対1になって発生することが多い。上司も最初はおとなしくしていても、酒の量が増えるとつい気持ちが緩んで、『もう1軒行かないか』と誘うようです。その結果、女性社員から『セクハラをされた』との通報を受けます。上司本人は『覚えていない』などと言うのですが、一緒にいた事実が確認できればアウトです」
誰でも酒の量が増えるとどうしても言動が緩みがちになる。その勢いで女性の肩に手をかけたり、下ネタを口に出したりするのだろう。「キャバクラ通い」を趣味にしているような男性上司はかなり危ない。