体を張って、実験台になった友人

【田原】開発は具体的にどうやった?

【中西】超音波で直腸を見て、ある程度の膨らみになれば便意を予測できるというのが私たちの仮説でした。そこで東京の超音波診断装置を貸してくれる会社に行って実験の毎日。まず超音波装置で直腸がわかるのかというところから始めました。

【田原】実験では何か食べて腸を膨らませるわけ?

【中西】普通に食べると消化に時間がかかるので、下剤を飲んでわざと下痢状態にしたり、逆にお尻からモノを突っ込みました。

【田原】えっ、お尻にモノ?

【中西】ソーセージを入れて動かしたり、水風船を突っ込んで水を入れていき、どこまで膨らんだら便意を感じるかを調べたり。でも、水風船の実験はうまくいかなかったですね。水風船を入れた瞬間に、すでに便意を感じたそうで。

【田原】実験台には誰が?

【中西】私はまだバークレーにいたので、正森や、青年海外協力隊時代のほかの友達に声をかけて手伝ってもらっていました。

【田原】みんなよく体を張って手伝ってくれましたね。どうしてかな。

【中西】僕が何もできないからじゃないですか(笑)。もう少し真面目に言うと、当時私たちは30歳前後で、何か挑戦するならいましかないという感覚があったと思います。大企業に入ると数年で先行きが見えてくる。つまらないから何か新しいことをやりたいんだけど、結婚して子どもが生まれると身動きが取れなくなる。動くならいまが最後のチャンスだと。

【田原】なるほど。話を戻します。水風船の実験に失敗してどうしたの?

【中西】実験していくうちに直腸より膀胱のほうが見えやすいことに気づきました。そこでまずはうんこより先に小便の予測にフォーカスを絞りました。要介護でうんこを漏らす人は小便も漏らすし、小便は回数が多いからデータも取りやすい。商品化するなら、こっちが先だろうと。そこから試行錯誤を重ねて、最初のプロトタイプは15年1月にでき上がりました。そこから半年ごとぐらいに改良していって、いまの「DFree」が製品版の5世代目。ちなみにDFreeはdiaper freeで、おむつ要らずという意味です。