総学費1億でも歯科医師国家試験に不合格のFラン
【歯学部】
医学部の人気ぶりとそれに伴う受験の難化はすでに広く知られている(中流家庭でも余裕「医学部入学」の奥の手)。ここでは、主に歯学部、特に私大歯学部について述べる。
日本歯科医師会は2014年の時点で「歯科医師需給問題の経緯と今後への見解」を公表し、「新規歯科医師数は年1500人程度が上限」と主張している。だが2017年度の歯学部の定員総数は約2500人だ。すでに過剰感があり、「5人に1人は年収300万以下」といった報道も多い。
こうした歯科医師過剰問題を受けて、文部科学省は歯学部定員をピーク時の約3400人から現在の2500人に減らしたが、削減したのは主に国公立大であり、総学費2000万~4000万円の私立歯科大における定員削減は大学経営に直結するために進まなかった。
そこで厚生労働省は“出口調整”することにした。すなわち国家試験を難化させることで過剰問題に対応したのだ。歯科医師国家試験は2003年の合格率91.4%をピークに難化の一途をたどり、ここ数年間の合格率は63~65%で推移している。
▼Fラン歯大 1年次は「ノートのとり方」から学ぶ
国家試験合格率は公表され、大学の格付けや人気に直結するため、どの私立歯科大学も必死で合格率の数字を上げる対策をしている。例えば、明らかに合格しそうにない学生を留年・休学・卒業保留などの手段で母数から排除するのだ。その結果、「浪人、留年、卒業保留、国家試験浪人を繰り返して、計1億円近くの学費を使ったのに無職のまま三十路に突入」するような悲惨なケースが、下位私大では多数発生している。
しかも、歯科大の場合、卒業したものの国家試験に合格できない学生が選択できる別の進路が極めて少なく、社会の眼も厳しい。
現在も複数校存在する国家試験合格率4割未満と囁かれる「定員割れ校」「Fラン歯大」は、「初年度1000万円+毎年500万円」の学費を払えば(事実上)誰でも入学できるといわれる。1年次のカリキュラムは「一次方程式」「ノートの採り方」のような授業で始まり、ストレートで6年生になれる確率は半分、最終学年を1回で終了できる確率はさらに半分なのだそうだ。たとえば、国家試験合格率24%のある歯大は、「入学定員96名、新卒受験者25名、合格者9名」という結果だったが、受験者が一定数いるからか今のところ閉校の動きはない。