画期的な「反力検知システム」を開発
当時、芝技研では開発した装置でテスト加工を繰り返して顧客に納入していた。そのため、知らず知らずに加工技術が身についていた。そんなときに、大手素材メーカーから半導体製造用の消耗部品の加工ができないかと相談が寄せられた。それが、冒頭で述べた半導体製造に使用される消耗部品である。
当時、そうした加工技術は世の中になかったが、福島はこれをチャンスと見て取り組んだ。経営が苦しい中、銀行から融資を引き出し、新しい設備を導入した新工場を設立した。
挑んだのはダイヤモンド刃具(はぐ)のドリルで穴を開ける方式だ。だが、ダイヤモンドといえども何度も使うと途中で刃こぼれを起こし、加工不良が発生する。そうなれば、当時1枚30万円というシリコン板は使い物にならない。不良率を下げたいが、刃具の劣化は避けようがない。
「それならば劣化する前に交換してしまえばいい。その自動装置ができないか」
福島はそう考えて、新しい装置の開発に取り組んだ。常識を打ち破る発想に、当時70歳を超えるベテラン社員も、熱に浮かされたように開発に没頭したという。その結果、96年に「反力検知システム(DLT=Detect Load Table=負荷検知台)」が完成する。
DLTは加工時の材料に対する刃具の抵抗(反力)を常に検知し、一定の値以上になると、自動的に使用中の刃具を捨てて、新しいものに交換する仕組みだ。この発明によって不良率は大幅に下がり、24時間365日の連続稼働が可能になった。製造コストも劇的に下がり、同業他社を圧倒する競争力を得た。
最近になって、DLTの外販も始めた。ノウハウを外部に公開することになるが、福島は「生産速度を2~3倍に上げているから大丈夫」と余裕だ。
現在、売り上げは絶好調で、さばききれないほどの加工受注があるという。これに外販するDLTの売り上げが加わる。事業承継もスムーズに進み、長男の健太郎が加工事業、次男の大二郎が加工機事業を受け持ち、2013年にそれぞれ社長、副社長に就任した。
苦難の道を歩き続けてきた福島もふたりにかじ取りを任せ、ほっと胸をなで下ろしているようだ。
(本文敬称略)
●代表者:福島健太郎
●創業:1980年
●業種:硬脆性材料の加工および特殊加工機械の開発製造販売など
●年商:25億円(2016年度)
●従業員:120名
●本社:神奈川県横須賀市
●ホームページ:http://www.shibagiken.co.jp/