目指すは世界の、トップ50企業

【田原】いま従業員は何人ですか。

【前田】もうすぐ80人です。

【田原】これから事業を伸ばすなかで優秀な人を集めなきゃいけない。前田さんはどういう人を選ぶんだろう。

【前田】大事なのは、やさしさがあるかどうか。他者への想像力がある人と一緒に仕事をしたいです。

【田原】おもしろい。前田さんは逆境に打ち勝ってきたわけですが、そういう人はだいたい自分にも他人にも厳しい。その自覚があるから、逆にやさしさを重視するのかもしれないね。将来の展望を聞かせてください。

【前田】方向性が2つあります。まずカテゴリーを横に広げること。いまはアイドルや声優などのサブカルが強いのですが、たとえば若手の政治家が自分の政策を語り、ギフティングで政治資金をつのる仕組みがあるとおもしろい。あるいは起業家がビジネスアイデアを語って資金を集め、成功すれば利益を分配してもいい。ほかにも芸人さんやスポーツ選手とか、総合百貨店的にいろいろ広げていきたいです。

【田原】もう1つは?

【前田】海外です。時価総額が世界で50位以内に入る日本発の企業ってトヨタ以降、出ていません。そういった会社をつくることがいまオープンにしている僕の夢です。

【田原】ギフティングの売り上げだけでそんなに大きくなるかな。

【前田】すでに国内のライブ動画配信アプリで収益ナンバーワンですが、たしかにギフティングだけでは限界があります。今後はビジネスモデルを広げる予定です。18年の前半には、演者が紹介した洋服などの商品をリアルタイムに買えるライブコマースの仕組みをリリースします。またレコードレーベルを立ち上げて、演者が曲をどんどん出せる仕組みをつくろうとしています。そうやって演者とユーザーの絆を強めて、それをさまざまな方法でビジネスにしていきたいなと。

【田原】BtoBに広げていくわけね。

【前田】はい。そのうえでアジア全体、さらに欧米圏に広げていけば、世界のトップ50位に入る企業になれると考えています。

前田さんから田原さんへの質問

Q. テレビの未来はどうなりますか

残念ながらテレビの将来は暗いです。ネットに広告を食われて、広告収入がじわじわ落ちている。新聞は部数減と広告収入減のダブルパンチ。かろうじて不動産で食べていますが、いずれテレビ局もそうなる可能性が高い。経営者は気づいていて、テレビ朝日が藤田さんのAbemaTVと組むなど模索をしています。

双方向性が弱いことがテレビの弱点です。前田さんの会社が伸びているのも、ライブ配信は双方向性が強いから。僕はネットのない時代から、「朝まで生テレビ!」で電話を受けて視聴者の声をナマで伝えてきました。視聴者が「自分も一緒につくっている」という意識を持てるかどうか。それが今後のテレビの明暗を分ける気がします。

田原総一朗の遺言:テレビ復活の鍵は双方向性

(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)
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