スティーブ・ジョブズは5分にすべて注入
(4)時間を考え、不要な内容は削り、シンプルにまとめる
次はスピーチに必要な時間をチェックする。人が1分間に話す文字数は、およそ300字前後になるので、3分間スピーチの場合の文字数は900文字前後になる。5分間スピーチの文字数なら、およそ1500文字前後が目安だ。
与えられた時間を考慮し、それよりもスピーチが長くなるようなら、削れるところはどんどん削っていき、シンプルにまとめよう。5分の話は、聴衆からは意外に長く感じる。よほど話し慣れている人でもないかぎり、一般的なスピーチでは5分以内にまとめるのが得策だ。
共感を呼び感動してもらえるスピーチをするには、原稿を書いて丸暗記する方法はあまりお勧めしない。その場の雰囲気や、前にスピーチした人の話の内容などを考慮し、オープニング(マクラ)の部分は、その場で変更したりアドリブを加えたりする場合があるからだ。そんな事態も想定して、マクラのテーマは複数用意しておくとよいだろう。
(5)本番前にしっかり練習する
スピーチの時間を決めたら、後は練習あるのみだ。
聞き手を魅了するスピーチやプレゼンテーションができる人といえば、今はなきアップル社のスティーブ・ジョブス氏だろう。彼が新製品発表のプレゼンテーションを行う際は、何週間も前から自社製品の機能や技術について調べ、わずか5分間のスピーチでも、その準備に部下と数百時間を費やし、リハーサルには丸2日間使ったという。
天賦の才能(生まれつきの資質)だと思えるほど卓越した彼の語りの上手さの裏には、周到に準備し、人並みはずれた練習量があったわけだ。そんな努力を微塵も感じさせず、ジョブス氏は聴衆をひきつけ、熱狂させる結果を出した。スピーチを成功させるには、練習すること。そして場数を踏むことに尽きる。
また、スピーチには人柄が出る。結婚式のスピーチで、東大を出た弁護士がスピーチしたときのことだ。自分が大学生のときに、新婦の家庭教師をしていたエピソードを、温かみのある福島の方言を使って話をされた。このスピーチにより、くだんの弁護士にはファンが増えた。方言を使うことで、上から目線でないことが列席者に伝わったからだ。人は「理」でなく「情」で動くということを、あらためて教えてくれたスピーチだった。