心をつかむスピーチへの5ステップ
ここから、相手にインパクトを与えるスピーチをするための、具体的な策を紹介していきたい。ポイントは、「人が心の中で感じている心情を言葉にし、共感や賛同を得て、行動に結びつく動機付けがなされる」ことだ。
1、聞き手の情報を集め、相手を知る
スピーチをする相手が社員なのか、取引先なのか。若者なのか、年長者なのか。ビジネスパーソンなのか、主婦なのか。聞き手が誰なのかを考え、聞き手が日ごろから感じていることや直面にしている状況について把握しておく。
結婚式の祝辞なら、新郎新婦の生い立ちやなれそめに加え、両家の両親の子育てについてのエピソードを集めておくといい。披露宴に招かれている人たちに両親の知人友人が多ければ、子育てに苦労した話はかならず共感してもらえるからだ。集めた材料は、スピーチの導入部などに使える。
2、スピーチする「大テーマ」を決める
引き受けたスピーチで、聞き手に対して「自分は何を一番伝えたいのか」「誰のために」「何を最も伝えたい」のかを決める。スピーチの結論、あるいはスピーチのタイトルだと考えればいい。たとえば、ビジネスパーソンなら、大企業ですら揺らぐ世の中で、先々に漠然とした不安を感じているだろう。彼らにはポジティブで、前向きな気持ちになるテーマが最適だ。
ビジネスパーソンに向けたポジティブなテーマなら、
・AIにはできない、人にしかできない仕事をする
・収入の多寡は、社会からどれだけ必要とされているかで決まる
・感動するサービスを提供する人になる
・職業の選択とは、人生を選択することだ
・運を味方につける
・名刺の力でなく、自分の力で社会から求められる人になる
・人によって態度を変えない人になる
などのテーマが浮かぶだろう。
経営者に向けたテーマなら、
・未来に不安を感じて立ち止まるのでなく、未来を自ら創造する価値について
・若者たちが入社したいと集まってくる企業の条件
・人は理でなく、情で動く
・生き方を変えた先人のひと言
・明日の後継者になる人たちに、これだけは伝えたいこと
・好調な時期に近づいてくる人、不遇な時期に支えてくれる人
などのテーマがある。
子供を持つ親や女性なら、
・一生忘れることができない、愛を注がれた思い出
・世界を変える人を、育てる人
・消費の9割を担う女性客の心をつかむ
・男性は問題解決脳で暮らし、女性は共感脳で生きる
・女性がかける励ましの言葉が、男性を飛躍させる
などがあるだろう。
スピーチのネタに困ったら、自分自身が聞いてみたい話や感動したテーマにすればよい。導入部が決まり、大テーマが決まったら、あとは実際にどう話すかだ。