米原油市場はシェール革命の進展とともに、市況が上昇すると生産量がすかさず増える市場構造に変わってきている。大規模油田に依存していた時代は、市況動向が生産活動に影響を及ぼすには数年単位のタイムラグがあったが、現在は数カ月もあれば影響が出てくる。昨年秋以降の市況上昇を受けて、足元の生産量は既に増加傾向にある。EIA(米エネルギー情報局)がこのほどまとめた短期エネルギー展望では、2018年の米国の原油生産量は1970年の記録を塗り替える歴史的な高水準に達すると予想している。

市況がボックス圏を突き破るまでは、増産の動きが出ると市況は頭打ちになったが、最近は増産観測を飲み込む勢いで強調展開が続いている。「景気拡大でエネルギー需要が高まるため、増産分は無理なく吸収できる」(市場関係者)との楽観的な見方が強くなっている。「原油価格が100ドル以上に高騰した2000年代前半と市場の雰囲気が似てきた」(証券アナリスト)との声も聞かれる。

今後の市況については、米国でガソリン需要が高まる夏場のドライブシーズンに向けてさらに強含み、1バレル70~80ドルを予想する向きも出てきている。

LNGスポットは半年で2倍に

LNGスポット価格も昨年秋以降、大幅に値上がりしている。スポット取引による貿易量はまだ多くはないが、スポット価格の動向はターム契約の条件交渉に影響する。市況が高止まりすれば、売り主を強気にさせ、買い手は不利な条件を飲まされるケースが出てくる。

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極東アジア到着LNGスポット価格は昨年夏以降、上昇基調に転じ、12月には百万BTU(英国熱量単位)当たり10ドル大台を突破、1月18日には11.8ドル(S&Pグローバルプラッツ社査定価格)の高値を付けた。昨年夏には5ドル前後だった相場はこの半年間で2倍以上となり、原油市況同様、2014年末以来、3年ぶりの高値水準となっている。

背景には中国の旺盛なLNG調達とこの冬の季節需要の高まり、原油価格の高騰などがある。中国は昨年、経済成長率が7年ぶりに前年を上回る高い伸びとなり、エネルギー需要が増大。加えて、大気汚染対策として石炭から天然ガスへの燃料シフトを推進してきた結果、LNGの輸入量が増加した。昨年の同国のLNG輸入量は前年比38%増の約3800万tと大幅に増加し、だぶつき気味だったスポット市場の需給を引き締めた。

また、この冬は世界的に寒さが厳しく、季節需要が増えている。さらに原油価格が昨年秋以降、水準を切り上げていることも売り手を強気にさせている。