ドイツの歴代首相は素晴らしい人が多い
【大前】東ドイツ時代、確かドレスデンだったかな。街の肉屋に入ったらソーセージしか売ってない。店主に聞いたら、1週間に豚が1頭くるんだって。さばいたら肉はあっという間に売れちゃう。くず肉をソーセージにするんだけど誰も買わないからそれだけ売れ残っている。当時は公害もひどかったからね。今は、旧東の部分もガラッと変わりましたけど。
【樫本】すごいお金を投じて、頑張っていますからね。
【大前】再統一のコストを皆で負担するということで、最大5・5%のサータックス(連帯付加税)も5年間、我慢して払いましたし。
【樫本】僕も払っていました。まだ一応、続いていますよ。
【大前】あれ? 5年で終わりの予定だったですよね。
【樫本】途中で中断されたこともありましたけれど、なんだかんだといって今でも続いてます。
【大前】再統一を成し遂げたヘルムート・コール首相にしても、今のメルケル首相にしても、ドイツの歴代の指導者は素晴らしい人が多いですね。よくまあ、あんな人が出てくると思いますよ。日本はいつまで経っても、ろくなのが出てこない。
英語、ドイツ語、日本語と3つの言語を使い分ける
【大前】樫本さんが日本で生活していたのは幼稚園まで?
【樫本】はい。小学校からアメリカだったので。
【大前】そうすると語学をキープするのは大変だったんじゃないですか?
【樫本】大変でしたね。10代はもう全然日本語がしゃべれない状態。それこそデビューしたての頃は、日本語のインタビューなんて無理、無理という感じでした。
【大前】すごい進歩ですね。
【樫本】最近ちょっとわかってきたかなと(笑)
【大前】私は学生時代に通訳をやっていて、向こうの学校(MIT マサチューセッツ工科大学)にも行っていたから英語はできるんですけどね。それからドイツ語。昔、いいなと思うドイツ人の女優さんがいてね。
ロミー・シュナイダー(オーストリア・ウィーン出身の女優。西ドイツ、フランスの映画界で活躍)というんだけど。ああいう女性を口説きたいと思ってドイツ語を勉強した。
【樫本】ああいうタイプ、ドイツには滅多にいませんから(笑)。
【大前】だよね。マッキンゼーというコンサルティング会社に入ったらドイツの事務所が大きくて、よく呼ばれてシーメンスとかドイツ銀行のコンサルタントをやっているうちに、彼らのひそひそ話が少しわかるようになった。でも口説くチャンスはなかったね。ロミー・シュナイダーには会えなかった(笑)。
【樫本】滅多にいないタイプだからこそ、有名になったんでしょうね。
【大前】まあ、おかげでドイツ語を勉強して、タクシー運転手にごまかされない程度にはなったかな(笑)。樫本さんも英語、ドイツ語、日本語と3つの言語を使い分けているけど、メンテナンスが大変じゃない?
【樫本】ドイツに住んでいますしドイツ語は必要ですが、同僚はやっぱり英語が多いので英語で話す機会も多いし、家庭は日本語ですから。結構、3つとも普通に使ってますね。
子どもには家ではなるべく日本語で話しかける
【大前】奥様(マリンバ奏者の出田りあ)はマリンバでしたね。
【樫本】そうです。
【大前】一緒にベルリンに住んでいるわけ?
【樫本】そうです。
【大前】お子さんは?
【樫本】子供もベルリンです。
【大前】ドイツ語?
【樫本】いや、まだしゃべれないので。1歳ですから。
【大前】このままいくとドイツ語?
【樫本】そうなるだろうと思います。だから家の中ではなるべく日本語で。じゃないと日本語を忘れてしまうと思うんですよ。
【大前】マリンバとヴァイオリンの組み合わせというのは、あまりいい曲がないですよね。
【樫本】ないですねえ。いろいろ調べたんですが、ギブアップしました。大きめの編成の室内楽で一緒にやったりはしているんですが、デュオはないですね。
【大前】ウチの奥さんはもともとニューイングランド音楽院でオーボエを吹いてたんです。私はMITのオケで吹いていて、彼女がトラ(エキストラ)で来ていた。来た途端に可愛い子だなと思ってね。私がドクターを取って日本に帰ってくるときにくっついてきた。19歳で日本にやって来て、すぐに結婚しちゃったので。
【樫本】ご結婚は日本で?
【大前】日本に着いた次の日です。
【樫本】すごいですね(笑)。