毎朝の下痢は腸もれが原因かも

朝の通勤電車に揺られ始めると、「ギュルギュルッ」と腹痛を起こす人が増えています。いわゆる「各駅停車症候群」です。腹痛が起こったらなるべく早くトイレに行けるようにと、各駅停車の電車に乗るようになることから、その名で呼ばれるようになりました。専門的には「過敏性腸症候群」といいます。今、日本人の10~15パーセントに認められるという、非常に頻度の高い病気です。なお、男性には下痢型が多く、女性には便秘型が多い傾向が見られます。

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各駅停車症候群は、通勤ラッシュ時など、ストレスが過度にかかるときに起こることが多く、これまではストレスが原因と考えられてきました。脳がストレスを感じると、その信号が腸に伝わり、腸の働きを狂わせるためです。

ところが最近、各駅停車症候群の裏に腸もれがある可能性が指摘されています。

通常、食べたものは腸で最小の分子に消化されてから、体内に吸収されます。しかし、腸に細かな穴があいていると、消化が不十分なまま栄養素が腸を通過してしまいます。

食物アレルギーは、原因物質となる食べ物をとることで、下痢を含むさまざまな症状が出てくる病気です。アレルギー反応を起こすのは、食べ物に含まれるたんぱく質です。本来ならば、アミノ酸という最小分子に分解されてから吸収されるべきところを、たんぱく質が未消化のまま腸を通過することで、体内でアレルギー反応を起こしてしまうのです。

アレルギーには、原因物質と接触してすぐに症状が現れる「即時型」と、6~24時間たってから現れる「遅延型」があります。

この遅延型というアレルギーがあることを、多くの人は知りません。症状は、下痢や便秘、めまい、倦怠感、吐き気、目の乾き、口内炎、肌荒れ、ニキビ、うつ症状、情緒不安定など多岐にわたり、人によって異なります。原因物質との接触後、しばらくしてから不快症状が現れるため、不調の原因がアレルギーにあるとは、本人も気づかないことがほとんどです。

つまり、ストレスが原因で下痢を起こしていたと思っていたところ、本当は朝食や前の晩に食べたものによるアレルギー反応だった可能性も高いということです。

食物アレルギーを起こす原因は、即時型も遅延型も、腸もれにあります。腸に細かな穴がなければ、腸で消化されない大きな分子のたんぱく質が、腸を通過することなど起こり得ないからです。

日常的に下痢や便秘に悩まされている人が多い日本。その原因には腸もれがあり、それは、腸内細菌を著しく減らしてしまう過度の清潔志向によって起きているものだったのです。

藤田 紘一郎(ふじた・こういちろう)
医師・医学博士
1939年、旧満州生まれ。東京医科歯科大学卒。東京大学大学院医学系研究科修了。金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学教授を歴任し、現在は同大学名誉教授。専門は、寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。日本寄生虫学会賞、講談社出版文化賞・科学出版賞、日本文化振興会社会文化功労賞および国際文化栄誉賞など受賞多数。
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