腸に穴があく人が増えている
それでは、腸内細菌の数も豊かで、腸内フローラのバランスも整っている際の大便とは、どのようなものでしょうか。理想の大便とは、
・便切れが爽やか
・練り歯磨きや味噌の硬さ
・黄褐色でにおいはかすか
・ゆっくりと水に沈む
というものです。バナナ4本分も出ればパーフェクトでしょう。腸内フローラの状態が大変よく、腸内細菌の数もたくさんいることを示す大便です。
では、腸内細菌の数が減り、腸内フローラが貧弱になると、どうなるのでしょうか。まず、箇条書きで記した「腸内細菌の働き」がうまく行われなくなります。いずれも生命活動に関わるものですから、初期の状態では疲労感や憂うつ感が強くなったり、風邪を引きやすくなったり、便秘や下痢などの便通異常が生じたりします。
さらに腸内環境が悪化してしまうと、どうなると思いますか。
今、腸に細かな穴のあいている人が増えています。
人の体を構成する細胞は、古い細胞が新しい細胞に次々と入れ替わっていくことで、臓器の働きを恒常的に保っています。この新旧の細胞の入れ替わりを「新陳代謝」と呼びます。新陳代謝のスピードは、臓器の働きによって異なります。消化吸収や免疫機能の維持など、生命に直結する働きを持つ腸は、人体のなかでもっとも重労働を強いられている臓器です。そのため、たえず新しい細胞を生み出すことで機能を保つ必要があり、わずか1~3日という短時間で新旧の細胞が入れ替わっています。これは、人体の細胞のなかで、もっとも早いサイクルです。
直訳すれば「腸もれ症候群」
この腸の粘膜細胞の生まれ変わりにも、腸内細菌は関与しています。腸内細菌は腸壁をびっしりと覆う絨毛の間にいて、粘膜細胞の生まれ変わりを助けているのです。
そのため、腸内細菌の数が減ったり、腸内フローラの多様性が乏しくなったりすると、腸の細胞の新陳代謝がうまくいかなくなります。すると、細胞間の連結がゆるんですき間ができます。これが「腸に細かな穴があく」ということです。
欧米ではこの症状が以前より問題視されていました。「リーキー・ガット・シンドローム」と呼ばれ、「心身にさまざまな不調を引き起こすトラブル」「多くの重大な病気につながる可能性の高いトラブル」ということがわかってきたからです。
ちなみに、「リーキー(Leaky)」とは「もれている」、「ガット(Gut)」とは「腸」という意味。直訳すれば「腸もれ症候群」となります。
腸にあく細かな穴は、非常に小さな目に見えないほどの細胞間のすき間です。しかしその穴は、腸内細菌や未消化の栄養素、毒素、腐敗ガスなどを通してしまうほどの大きさがあります。