「JR同士で責任を押しつけるな」と毎日

次に毎日新聞の社説。「危機感があまりに乏しい」との見出しで12月15日付紙面に掲載された後、12月22日付紙面にも掲載され、その見出しで「JR全体で深刻さ認識を」と主張している。

22日付社説の中盤では「おととい記者会見したJR東海の柘植(つげ)康英社長は、新大阪駅でJR西日本から『運行に問題はない』との引き継ぎを受けたと明かし、新大阪駅で床下を点検してほしかったとJR西日本の対応を批判した」と書き、さらに「一方、JR西日本の来島達夫社長は記者会見で、引き継ぎについて『調査中』と述べるにとどまった」と指摘する。

毎日社説は「責任を押しつけるのではなく、JR全体で安全運行を図る姿勢を利用者に示すべきだ」と主張するが、JR東海とJR西日本はともに乗客の生命を預かっているとの認識に欠けている。

全国紙のなかで一番最後に社説を掲載したのが日経新聞だった(12月23日付)。経済専門紙を名乗っている以上、日本の経済活動を支える新幹線のトラブルを軽視できないはずだ。それにもかかわらず、12月11日のトラブル発生から社説で論じるまで10日以上も経過しているのは不可解だ。

見出しは「新幹線の安全を守るために」で、その内容は「徹底した原因究明と再発防止策を求めたい」との趣旨を中心に書いているが、各紙の社説と似たり寄ったりで日経独自の視点は見当たらない。それなのに、どうして掲載までにこれだけの時間がかかったのだろうか。

「あわや大惨事」という認識があったのか

繰り返すが、トラブルが発生したのが12月11日。JR西日本が公表したのが翌12日で、運輸安全委員会もこの日に「重大インシデント」に認定している。

19日にはJR西日本の副社長が記者会見し、続けて20日に社長の定例の記者会見があり、同じ20日にJR東海の社長も会見していた。ニュースとしては各紙とも公表があった次の日の12月13日紙面の1面や社会面で展開している。だが社説での扱いは、新聞によって対応がわかれた。

社説で2回取り上げている毎日新聞の認識は正しい。他紙は「あわや大惨事」という認識に欠けていたのではないだろうか。

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