東京社説は「異変を確認してから3時間も運転を続けていたことになる。その判断に問題はなかったか」と訴え、「優れた安全システムも、携わる人間が基本動作をおろそかにしては事故防止には結びつくまい」と指摘する。

東京社説の主張の通りである。3時間もの間、JR側は何をしていたのだろうか。事故はわずかなトラブルから起きる。「大事故の背後には数多くのトラブルや前触れが隠れている」というハインリッヒの法則がそれを物語っている。トラブルの芽をひとつひとつ確実に摘み取ってこそ、安全運行を維持できるのである。

それを「大丈夫だろう」と軽く判断し、運行を継続した。安全よりも運行を優先した。乗客に苦情を言われたくなかったのだろう。少しでも経営に響くようなトラブルは避けようとしたのだと思う。だが、もし事故につながっていたら、大惨事になる危険性があった。約1000人の乗客はどうなっていただろうか。

「構造上の問題や経年劣化か」と読売

読売新聞の社説(12月19日付)は「もっと早く運行を打ち切るべきだった。石井国土交通相が『判断の妥当性を検証する』と述べたのは当然である。走行を続けたことにより、亀裂がさらに進んだ可能性も指摘されている」と書き、次のように指摘する。

「異常が生じれば、最悪の事態を避けるため、迅速に対処するのが安全運行の鉄則である。多少の異常に目をつぶっても、ダイヤ通りに運行しようという意識が現場で働いたのではないか」

さらに読売社説は「気がかりなのは、台車の亀裂が溶接部ではない部分で起きたことだ。溶接部の亀裂であれば、過去にも私鉄車両で発生している」と指摘し、「構造上の問題や、経年劣化の可能性もある」と分析したうえでこう主張する。

「鉄道各社は、検査マニュアルの見直しを迫られよう。亀裂が入った原因を早急に突き止めることが、何より重要である」

新幹線は東京ー新大阪間だけでも1日に350本以上も運行し、多い時間帯では数分おきに発着している。スピードは時速200キロ以上だ。

それだけに車両に与える負荷は大きく、年月とともに劣化も起きる。仮に今回の亀裂の原因が経年劣化や共通の構造上の問題に由来するとしたら、他の新幹線車両にも同じトラブルが発生する可能性がある。

朝日新聞は東京新聞から6日遅れて展開

朝日新聞は東京新聞から6日遅れて12月20日付で社説を展開している。

朝日社説は「JR西は『今後は異常がないことを確認できない場合、ちゅうちょなく列車を止めることを徹底する』と説明したが、なぜ速やかに止められなかったのか、現場と指令所との間でどんなやりとりがあったのか、細部にわたる検証が必要だ」と主張する。

そのうえで「JR西日本は12年前の宝塚線脱線事故後、『安全性向上計画』をつくり、安全が何よりも優先すべきだと誓った。その精神を忘れてはならない」と訴える。

産経新聞は12月21日付の紙面に社説(主張)を掲載し、「安全最優先は名ばかりか」(見出し)と皮肉る。皮肉を込めた見出しは産経社説にしては珍しいと思う。しかも今回の皮肉り方は朝日社説のようなノリがあり、実におもしろい。