メジャーマラソン大会の上位選手はみなナイキの厚底
池井戸潤が原作となる小説『陸王』を発表したのは2013年7月だ。当時はソールが薄く、フラットなシューズは最先端のかたちだった。だが、現在、陸上界のトップランナーが足袋型シューズを履いているかというと、答えは「NO」だ。それどころか、最近の陸上界では、ナイキの“厚底シューズ”を履く選手が急増している。
その厚底シューズが今年7月20日に発売された「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%」というモデルだ。今年4月のボストンマラソンでは1~3位の選手全員が使用していた。また今年12月の福岡国際マラソンでも、やはり1~4位の選手全員が履いていた。両レースでともに3位に食い込んだ大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)は、その感想をこう語っている。
「見た目のソールは厚いですけど、初めて手にしたときは、『とても軽いな』というのが第一印象でした。実際に履いてみると、クッション性が高く、今までのシューズよりも反発がスムーズだったんです。トラックでスパイクを履いているような感覚がありました。しっかりスピードに乗れるだけでなく、一歩一歩の衝撃が少ないので、マラソンでも後半に脚を残すことができたと思います」
▼ナイキ「ズーム ヴェイパーフライ4%」の何がすごいのか
5000mで日本記録を保持するなど大迫はもともとスピードに定評のある選手だったが、その反面、20km以上のレースでは後半に失速するケースが少なくなかった。しかし、「ズーム ヴェイパーフライ4%」を履いて臨んだボストンと福岡国際では、30km以降に持ち味のスピードを発揮。福岡国際では現役日本人最高の2時間7分19秒で走破するなど、マラソンランナーとしての才能を見せつけている。
では、「ズーム ヴェイパーフライ4%」のどこがすごいのか?
ナイキによると、同社のマラソン用スピードシューズである「ストリーク6」との比較試験に基づき、ランニング効率を平均4%高めることを目標として開発されたシューズだという。最大の特徴はソールが厚いこと。ソール全体にカーボンファイバー(炭素繊維)のプレートが埋め込まれており、それがバネのような役割を担っているのだ。
ドラマ『陸王』でも特許を取得した特殊素材をソールに使用する話が出てくるが、ナイキが採用しているカーボンファイバーは、「エア」にかわる新素材といっていいだろう。今年10月の出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走)を制した東海大の主力選手も、ナイキの新シューズを履いていた。