高性能シューズを履けば市民ランナーも速く走れるのか?

さらにドラマでは再起を期す茂木の走り方に合わせて、ソールの硬さを調整するシーンもあるが、ナイキは基本的に選手に合わせた調整はしない。大迫はナイキの契約選手だが、使用しているシューズはすべて既製品だ。足型もとっていないという。一方、国産メーカーであるミズノとアシックスは、契約しているトップ選手の足型を採取して、選手のリクエストに応えるために“別注シューズ”を製作することもある。

正月恒例の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)で活躍が見込まれるくらいのレベルになると、スポーツメーカーから「シューズ契約」の話が舞い込んでくる。大半の選手は物品提供だけだが、日本トップクラスになると金銭的なサポートもある。また高校生で個人契約しているケースは少ないが、強豪校の陸上部はチームで契約しており、そのなかで別注カラーのシューズを履いているというパターンは多い。強豪チームとの契約は、メディア露出はもちろん、大会などでも目立つために販売促進につながるという考えだ。

▼ナイキの厚底を履き「フォアフット走法」で3位に
ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%を履いた選手が「6つの世界的なマラソン大会で19のトップフィニッシュをした」(12月6日に発表されたナイキのプレスリリースより)

「ズーム ヴェイパーフライ4%」の話に戻すと、既製品であるためにナイキ契約選手でも全員にフィットするものではない。選手によって感覚は違うからだ。たとえば、大迫は同シューズを「ハーフマラソン向き」と話している。設楽悠太(Honda)は、同じシューズを履いてハーフマラソンで日本記録(1時間0分17秒)を樹立しただけでなく、トラックの1万mでも今季日本最高の27分41秒97をマークしている。

ドラマでは茂木が走法を変えて、それにマッチした足袋型シューズを履くことで、見事に復活する。それが「ミッドフット」という足裏全体で着地をする走り方だ。日本人は踵部分から着地する「ヒールストライク」という走り方が大半を占めるが、大迫は爪先部分で着地する「フォアフット」と呼ばれるスタイルで走っている。

福岡国際を走ったシューズの裏を見せてもらったが、爪先部分と比べて、踵部分の汚れが少なかった。ただし、大迫の場合は意図的にフォアフットで走っているわけではなく、中学時代から基本的な走り方は変わっていないという。その一方で、トラックからマラソンに距離を伸ばすときに、ミッドフット気味の走りから踵着地を意識するようにして、成功した選手もいる。