なぜ70代消費に注目するのか
いま70代の消費を注目する理由には3つある。
第1に、今後5年間は、60代人口が減少し、70代人口が増加するからである。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」によれば、2017年の60代の人口は1772万人であるが、2022年には1523万人に減少し、70代人口は2015年の1449万人から1649万人へ増加する。このような変化が起きるのは、今年から、団塊世代(1947~49年生まれ)が70代に入ってくるからである。
第2に、これからの70代は、現在の70代に比べ、健康状態が良く、学歴も高く、運転免許を持っている割合が高いため、消費の質的変化が起きることが予想され、新たなビジネス機会が期待できるからである。
厚生労働省「国民生活基礎調査」で健康意識をみると、「健康がふつう以上」と回答した割合をみると、2016年の70~74歳は81%である。これは約10年前の2004年の65~69歳と同一である。12年前に比べ、5歳程度健康意識が若くなっているといえるだろう。
高学歴化も進んでいる。日本は、団塊の世代から、大学進学率は上昇していく。総務省「就業構造基本調査」にもとづく推計すると、現在の70~74歳で短大・高専以上の学歴を持っている割合は18%であるが、5年後の70~74歳は24%に上昇する。高学歴なほど海外旅行や芸術活動を行う割合は高く、高学歴化は海外旅行や芸術関連のニーズを高めることが期待できる。
警察庁「運転免許統計」にもとづくと70~74歳の運転免許保有率は、2015年では男性82%、女性42%だが、2020年では男性86%、女性58%になると予測される。とくに女性の運転免許保有率は16ポイント増が見込まれるため、高齢女性向けの自動車ニーズが高まることが期待できる。高齢ドライバーによる事故も多いことから、安全運転サポート車へのニーズが高まるだろう。
第3にバケットリスト的消費が期待できることである。70代の健康状態はよいものの、80代になると、認知機能、身体機能が低下するという不安があるため、元気なうちにやりたいことをやっておきたいというニーズが高まる。「バケットリスト」とは、死ぬまでにやっておきたいことを書き留めるリストのことだが、まさに70代はバケットリストの書かれたアイテムを実行に移す時期だと考えられる。そこにビジネスチャンスがある。
一に健康、二が旅行
三菱総合研究所では2012年から毎年50歳以上のシニア1万5000人を対象とした生活意識・行動に関するアンケート調査(以下、「mifプラチナ」)を実施してきている。mifプラチナを始めた目的は数少ない有望分野であるシニア層の実相を把握するためである。母集団が1万5000人にものぼるシニアを対象としたアンケートと調査は他に例を見ない。開始後6回目を迎え時系列の比較も可能になってきた。
2017年6月に実施したmifプラチナ調査をベースに、70代の生活意識と消費の特徴を描いてみよう。
まず、予想外だったのが、高齢者の生活満足度は、高齢であるほど高い傾向にあり、しかも同じ年齢でも、年々高まる傾向にあることだ。老い、病気、愚痴ばかりといったイメージとは大きく異なる。65~69歳の満足度(満足+どちらかと言えば満足の合計)は68%であるが、70~74歳は72%、75~79歳は73%である。5年前の同じ年齢層と比較すると、65~69歳では3ポイント、70~74歳では2ポイント、75~79歳では4ポイント上昇している(図表1)。