つぎの予想外は1人当たりの消費金額である。高齢者の消費は少ないというような印象を持ちがちであるが、総務省「家計調査」でみると他の年代と比較し、遜色がない。誤解が生じやすいのは、世帯当たりの消費支出だけをみて、世帯人員の減少をみていないことだ。世帯主年齢別に世帯当たり消費支出(2016年、2人以上世帯)でみると、60~64歳が29万円、65~69歳が27万円、70~74歳が25万円、75~79歳が23万円となっているが、世帯人員は、60~64歳が2.8人、65~69歳が2.6人、70~74歳、75~79歳が2.4人であるので、1人当たりでみると、どの年齢層も1人当たり約10万円で変わらない。

想像以上であったのは、健康維持のため、高齢なほど運動に熱心なことだ。フィットネスクラブやスポーツ施設を利用する割合は、50~54歳では10%であるが、年齢が高まるにつれ増加し、70~74歳では18%とピークになる。しかしさらに年齢が高まると、その割合は低下する。時間にゆとりができ、運動をするようになるが、70代半ばをすぎると、身体機能が低下して、運動を継続することが、難しくなるのだろう(図表2)。

食生活の健康志向も想像以上だ。食生活では、できるだけ自然で国産の食品で栄養を取りたいという気持ちが強く、加工した健康食品やサプリメントの利用は低下している。食品の中では、乳製品やヨーグルトなどの利用が高まっている。乳製品は骨粗鬆症対策、ヨーグルトは乳酸菌の摂取など、予防に力を入れた商品のニーズが高まっている。

バケットリストで最上位に挙がるのが旅行である。mifプラチナによれば、数年に1回以上海外旅行に行く割合は、65~69歳が40%で最も高い。近年は海外旅行に行く傾向は国際情勢、感染症、円安などの影響で全般的に低下傾向にあるようだ。ただ、前述したように、70代は高学歴化するため、海外旅行が70代で増加していく可能性もあるだろう。

一方、国内旅行(宿泊を伴う)は70代がピークである。数年に1回以上国内旅行に行く割合は、65~69歳で85%、70~74歳で88%、75~79歳で87%である。温泉、寺社、離島、ドライブ旅行などに人気がある。

やっぱりインターネットは苦手

最も印象に残ったのは、シニアのコーホート(同一出生母集団)でみると、この10年間インターネットの利用率はほとんど増加していないことだ。

総務省「情報通信利用動向調査」によれば2016年における70代における携帯電話保有率は70%である。10年前の60代-つまり現在の70代の10年前-は59%であり、それと比較すると、11ポイント増である。

一方、2016年における70代のインターネット利用率をみると54%である。10年前の60代は、54%で同じ水準である。そのまま年を重ねただけで、インターネット利用は全く進んでいない。この傾向は現在の60代でも同様だ(図表3)。