また、エンターテインメントとしての間口が広くなったゆえか、最近では恋愛と結びつけて語られるケースも見受けられる。
「だと思いますよ。音楽を通じて、ひとつの価値観を共有できた訳ですから。合コンとかで知り合う人よりは、心のハードルが低くなって、気軽に連絡先の交換できちゃうかも(笑)。実際にフェスで知り合ってゴールインした『フェス婚』カップルって、私の周りに多いですしね」
音楽から恋愛まで、あらゆるエンターテインメントが詰まった、フェス。忘れられない夏の思い出をここで刻めることは、確かだ。
(Men's JOKER PREMIUM「美女がこっそり教えてくれた【夏フェス】の楽しみ方 美人プロモーターの夏フェスの楽しみ方の巻」2017年5月26日掲載)
ここで紹介した記事の前半には音楽に関する話もされているということをあらかじめ補足しておくが、メジャーレーベルで働く、いわば「業界の中の人」が(ファッション誌のウェブサイトという媒体特性があるとはいえ)フェスにおける「音楽以外の側面」を強調しているのは、なかなか興味深い構図である。
「音楽に詳しい人向けのお祭り」から「恋愛要素もある夏のイベント」に進化したフェスは、今では花火大会やテーマパークといった娯楽と同じような位置づけで語られるようになっている。これが意味するところは、「音楽ファンに限らず、すべての人が想定顧客になる」ということである。もちろん「人混みが嫌」というような人は除外されるだろうが、世の中の娯楽の細分化が進み音楽もその渦中にいる状況下において、フェスはそんな流れに逆行するように最大公約数的な側面を持つエンターテインメントになった。「音楽イベントである、だけど音楽を知らなくても聴かなくてもいい」という一見するといびつな構造こそがフェスマーケットが拡大する鍵であり、「すべての人が想定顧客」である以上まだまだ残されたパイは大きいと考えられる。
音楽ブロガー
1981年生まれ。海城高校、一橋大学商学部卒。大学卒業後の2004年から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、新商品開発などに従事。会社勤務と並行して、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。