今年のフジロックも盛況だった(編集部撮影)
多数のミュージシャンが出演する「音楽フェス」が、夏のレジャーの定番になりつつある。だが10年ほど前までは「音楽に詳しい人向けのお祭り」だった。なにが変わったのか。音楽ブロガーのレジー氏は、主催者たちの「フェスは参加者が主役」という発言に注目する。そのうえで「ユーザー起点で新たな遊び方が創出される『協奏のサイクル』が生まれている」と分析する――。

※本稿は、レジー著『夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる』(blueprint)の第1章を再編集したものです。

フェスを「協奏」する参加者

「フェスは参加者が主役」「フェスはみなさんと一緒に作るもの」。こういったメッセージは、フェスを運営する人たちから長年にわたってたびたび発信されている。

フェスティヴァルはお客さんと一緒になって作っていくもの。我々もお客さんと一緒になって学んでいかなければいけないと思ってますが、このイヴェントで、基礎の少しはできたんじゃないかと思います。
(『ミュージック・マガジン』ミュージック・マガジン/1997年9月号/P22/1997年のフジロック終了後のスマッシュ日高正博氏コメント)
あなたも僕もロックもアーティストも冷やしうどんもケバブも、みんな「フェスという名の現場」です。だから現場で、やり合っていきましょう。自分をしっかり持ち、ロック・イン・ジャパンを今年も共に育てて行きましょう。よろしくお願いします。
(ロッキング・オン『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2002』鹿野淳氏「MESSAGE」2002年7月25日掲載)
本来のフェスティバルでは主役はお客さんだったはずのものが最近では、主催者が一方的な提供をする、主催者が主役のフェスと名の付いたイベントになり、それに気付かずに遊ばせてもらっているお客さんが増えて来ているように感じとれてなりません。(中略)「自由」には「責任」もついてきます。ロックフェスティバルにおいてお客さんの自主性は非常に重要です。ライジングサン・ロックフェスティバルは理解して頂けるオーディエンスの協力と共にここまで成長してきました。主催者として、初心を貫いてきたと言いきることのできる道のりではありませんでしたが、こうして続けてこられた10回目だからこそ、原点回帰することで、フェスティバルと日本のロックの未来に向かっていこうと思います。
(WESS『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO』WESS山本博之氏「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO開催決定!」2008年1月1日掲載)
苗場の大自然に抱えられたそこには、音楽を中心とした特別な空間が生まれます。
世界各国の音に、食、アート、アトラクション、映画などのお楽しみ、その合間には、自然そのものを感じたり、環境に配慮する姿勢や社会のことを考えてみたりするちょっとしたきっかけがちりばめられています。
音楽だけに限らず、そんな様々な出会いがそこには存在します。
その場所は、山であり、土や砂利の道を歩き、雨も降ります。日常の生活とはかけ離れ大自然ならではのアクシデントも起こり得ます。
しかし、普段の生活と切り離せない「日常」に沿った居食住を、その特別な空間で過ごすことで、そのアクシデントも素敵な出会いに変わることでしょう。
その空間を作り出すのは、来場されるお客さんであり、出演者であり、我々スタッフです。
(スマッシュ『FUJI ROCK FESTIVAL ’17』公式サイト「はじめに」

「フェスの主役はお客さん」とは、具体的にどういう意味だろうか。